- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 00:56:26.22 ID:xjC3Um/HO
- 【第十五話 強風】
(´<_` #)「はあっ!」
開始の合図と共に弟者が凄まじい勢いで打ち込んだ。
渋沢はそれを落ち着いて防ぐが竹刀を交わした瞬間顔色が変わる。
( ^ω^)(あれは重いお……)
竹刀を交じりあわせているとは思えない音を立たせながら
弟者の打ち込みは間髪無く続く。
無表情だった渋沢の顔が初めて歪んだ。
(# ,_ノ` )「おおっ!」
渋沢が負けじと打ち返す。
激しい打ち合いが続いたが、意外にも先に距離を置いたのは弟者だった。
竹刀をを高く上げ待ち構える姿勢を取る。
(´<_` #)「ふしゅぅぅ」
弟者が息を大きく吸い込むと声を出しつつ吐き出した。
布の上からでも分かるほどに弟者の筋肉が盛り上がる。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 00:57:34.18 ID:xjC3Um/HO
- 対する渋沢は竹刀を腰の位置まで下げると、距離を保ちつつジリジリと足を運んだ。
その動きに合わせて弟者が身体の向きを変える。
一転して場が静まった。
( ,_ノ` )「……」
(# ,_ノ` )「はぁっ!」
沈黙を破ったのは渋沢だった。流れるように弟者との距離を詰める。
(´<_` #)「おおっ!」
弟者の間合いに入った瞬間、凄まじい面打ちが襲い掛かる。
渋沢はそれを下から防ぐが威力を殺しきれなかった。
大きく態勢が崩れる。
すぐさま再び弟者が打ち込んだ。
( ,_ノ` )「むっ!」
強烈な面打ちを身体を捻り寸前で躱す。
弟者の竹刀は肩を掠め地面に叩きつけられた。
( ^ω^)(浅いお…)
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 00:58:38.47 ID:xjC3Um/HO
- ( ФωФ)「一本!」
(´<_` ;)「!?」
( ,_ノ` )「……」
場内がどよめく。
渋沢は表情を変えないが、逆に弟者が驚いているように見えた。
( ФωФ)「何をしている。二本目を始めるぞ」
周りを気にせず強い口調で杉浦が言い放つ。
渋沢は杉浦を一睨みすると開始線に着いた。その表情から感情を読むことはできない。
( ^ω^)(怪我をせぬように細かく取るのかお?しかし今のは……)
明らかに浅かった。
しかし場内は藩内の者の勝ちに沸いている。
内藤の心に一抹の疑惑が浮かんだ。
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 00:59:37.36 ID:xjC3Um/HO
- ( ФωФ)「始めっ!」
二本目。
先に動いたのは渋沢だった。
素早く的確に相手の隙を突き、距離を置こうとする弟者を追い詰める。
(´<_` ;)「うっ!」
しなやかな太刀筋が下段から跳ね上がり弟者の胴をはらった。
( ^ω^)(む……)
( ФωФ)「一本!」
あちらこちらから感嘆の声が漏れる。
それほどまでに美しく流れるような一撃だった。
これで一対一。
しかし渋沢は開始線に向かわず腹を押さえて立つ弟者に近づく。
( ,_ノ` )
「……なんのつもりだ。手を抜くとは」
渋沢が弟者を鋭く睨み付けた。
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:01:07.10 ID:xjC3Um/HO
- 弟者も正面から睨みかえす。少し間を置いて口を開いた。
(´<_` )「……俺の目的は流石一刀流の強さを証明することだ」
( ,_ノ` ) 「つけあがるなよ小僧。お主ごときに本気を出していると思うか」
(´<_` )「ふむ、これは失礼した。拙者も本気を出すとしよう」
(# ,_ノ` ) 「……」
(´<_` )「……」
杉浦にせかされ二人が開始線に着いた。
再び睨み合う。周りからも分かるほどに二人を包む空気がに変わっていた。
( ^ω^)(殺気に満ちてるお…やはり先程の立ち合いは本気では無かったか)
気にあてられ内藤の身体が熱くなる。
血が騒いだ。
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:02:16.62 ID:xjC3Um/HO
- ( ФωФ)「これが最後の一本だ。始めっ!」
(´<_` #)「はあっ!」
(# ,_ノ` ) 「おおっ!」
正面から二人が交わった。竹刀が折れたのではないかと思われる程の音が響く。
そのまま押し合う形になった。
弟者の竹刀がジリジリと渋沢を押し込んでいく。
耐える渋沢の足が地面にめり込んだ。
(# ,_ノ` )「おおっ!」
渋沢が身体を捻りながら竹刀を滑らせた。
そのまま離れながら鋭い面打ちを放つ。
(´<_` #)「ふんっ!」
弟者はそれを下から思い切り弾き飛ばす。
態勢を崩しながらも渋沢は素早く距離を置いた。
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:03:40.83 ID:xjC3Um/HO
- (´<_` #)「ふしゅぅぅ」
弟者が再び竹刀を上段に構え息を吐く。
殺気を纏わせたその姿は竹刀にもかかわらず死を連想させた。
( ,_ノ` ) 「……」
対する渋沢は腰を低くし竹刀を腰だめにした。
ちょうど刀を抜くような格好になる。
(´<_` )「…竹刀で居合いだと?かなわぬと見て勝負を捨てたか」
( ,_ノ` ) 「……」
渋沢は返事をしない。
しかしその堂々とした構えにはどこか尋常ではない雰囲気が漂う。
( ^ω^)(確かに鞘を使わぬ竹刀では意味がない型だお……しかし)
空気が張り詰めた。
場内の皆が息をのんで二人に視線を注ぐ。
ザッ
渋沢が足元の小石を弾き飛ばし凄まじい速さで飛び込む。
二人の姿が交錯した。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:15:30.00 ID:xjC3Um/HO
竹刀が宙を舞った。
(´<_` ;)「ぐああああ!!」
弟者がうずくまる。
指が数本あらぬ方向に曲がっていた。
(;ФωФ)「一本!……!?」
(;^ω^)「 待てっ!一本だお!!」
内藤の叫びは届かなかった。
渋沢は素早く振り替えると、うずくまる弟者の額に竹刀を強烈に打ち込む。
( <_
)「あぁ…」
弟者は額から血を流し昏倒した。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:16:29.41 ID:xjC3Um/HO
- 杉浦が顔を赤くして詰め寄る。
(#ФωФ)「貴様…どういうつもりだ。聞こえなかったとは言わせぬぞ」
横たわる弟者を見下ろしながら渋沢は悪怯れずに言い放った。
( ,_ノ` ) 「…入即流は相手を確実に仕留めるまで止まらぬ」
(#ФωФ)「…貴様!」
怒りに震える杉浦がちらりと引家の方を見る。
何事か目で交わした。
(#ФωФ)「勝負は流石の勝ちとする!
おい!早く流石を運びだせ!」
場内は騒然としている。
渋沢への罵声が至るところから飛んだが本人は憮然とした態度で席に座った。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:17:29.30 ID:xjC3Um/HO
- 一方、内藤は慌ただしく戸板に乗せられ運ばれる流石を目で追いながら
先程の立ち合いを頭に思い浮かべていた。
( ^ω^)(見えた……が、あれほどの速さをもちながら正確に持ち手を打つとは。
刀であればどれほどの速さをもつか分からぬお…果たして拙者に防げるか…)
前に目を向けると、冷静さを取り戻した杉浦が藩主の前で額を地につけていた。
(;ФωФ)「お見苦しいものを……申し訳ありません」
(`・ω・´)「よい。続けろ」
(;ФωФ)「はっ!」
こちらに向かう顔が歪んでいた。渋沢を睨み付ける。
( ФωФ)「次は茂良と内藤だ。支度をしろ」
( ^ω^)「はい」
竹刀を握り締める。
手入れを欠かさず幼少から使い続けた竹刀は手に吸い付くように馴染んだ。
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:18:52.03 ID:xjC3Um/HO
- 藩主の隣にいる荒巻と目が合った。いつもと変わらぬ視線を送ってくる。
( ^ω^)(やれるお……)
再び内藤に力が溢れた。
ここに来て心身共に充実しているのがわかる。
こんなにも冷静でいられる自身に若干驚きを感じながら数本竹刀を振るう。
ゆっくりと開始線に着くと茂良を待った。
( ^ω^)(ツン、待っててくれお。必ず約束を)
その時、場内を強い風が吹いた。
思わず内藤は目を細める。
その風が波乱を呼ぶものだとは今の内藤に知る由は無かった。
続く
('A`)「ちと遠いがこの山からなら見えるな」
('A`;)「っ!?」
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