26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:26:36.11 ID:xjC3Um/HO
【第十六話 殺意】


少し遅れて正面に茂良が立った。
並々ならぬ気合いを放つその目とは対称的に、顔には不敵な笑みが浮かぶ。

( ・∀・)「我らの勝負は五分であったな。ここで決着をつけれるとはありがたい」

( ^ω^)「お、確かに。だが負ける気はござらんお」

( ・∀・)「ふん、先日のような油断はもう無い」

(# ・∀・)「汚名も屈辱もこの腕で晴らさせてもらうまでだ!いざ!」

(#^ω^)「おおっ!」

双方の気合いがみなぎる。

( ФωФ)「始めっ!」

高らかに開始の合図が言い放たれた。

(# ・∀・)「はあっ!」

(#^ω^)「おおっ!」

二人は気合いと共に弾かれるように前に飛ぶと竹刀を絡み合わせた。

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:28:14.74 ID:xjC3Um/HO
互角の打ち合いが続く。
速さで優る内藤が素早い打ち込みを続けるが、茂良の卓越した腕がそれらをさばく。
その姿には余裕すら感じられた。

(# ・∀・)「おらぁ!」

つばぜり合いを茂良が制した。
内藤の身体を弾き飛ばすとずいと踏み込み面を放つ。

( ^ω^)(来るかお!?)

内藤は素早く竹刀を高くかかげた。頭の中では既に茂良の技に対する工夫は出来ている。
瞬時に足元を固め待ち構えた。

(# ・∀・)「ふん!!」

(;^ω^)「っ!!」

内藤は気付くのが一瞬遅れた。
茂良の踏み込んだ位置は面打ちの間合いでは無い。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:30:15.96 ID:xjC3Um/HO
茂良の意表をついた小手打ちは慌てて後ろに飛ぶ内藤を逃さなかった。
左手の甲に焼けるような痛みを感じる。
皮が裂けじわりと血が溢れた。

( ФωФ)「……」

杉浦は試合を止めずにいる。浅いと判断したのだろう。

(;^ω^)(己の技を囮に使うとは)

多少動揺しつつ内藤は竹刀を握り直す。
痛みとともに血が溢れたが力は入るのをを確認した。
一度大きく息を吐き気を引き締める。



( ^ω^)「……?」

その時
内藤は茂良の後ろで黒い塊が跳ぶのを見た。

(  ∀ )「……」

茂良は動かない。





(; ゚ω゚)「!?」

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:31:36.06 ID:xjC3Um/HO
驚愕の表情を浮かべながら茂良が膝を着いた。




内藤に向けられる視線が光が失っていく。




(  ∀ )「……」




腹から突き出た白刃が嫌な音を立たせながら引き抜かれる。




茂良が倒れたことによってその背から一人の男が姿を見せた。
相変わらずの無表情。

( ,_ノ` )「……」




(; ゚ω゚)「おおおおお!!」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:32:42.14 ID:xjC3Um/HO
(;-_-)「何をしておる!捕らえ…斬れ!斬り捨てよ!!」

あまりの出来事に固まった場の空気を引家が切り裂く。
すぐに数人の武家が刀を抜き気勢をあげた。




それが合図だった。






(;-_-)「…な、何をしておるかあああ!!」

(; ゚ω゚)「…ああ」

内藤は目に信じられない光景が映る。

刀を抜いた男達は渋沢に向かわず次々に近くの家臣に斬り掛かった。

混乱の中、悲鳴と怒号が場内を包む。




(;-_-)「まさか…謀反か!!」

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:37:28.00 ID:xjC3Um/HO
「御免!」

男が二人、血に塗れた抜き身を手に藩主に駆け寄る。
引家が慌てて刀を抜くが、目にも止まらぬ速さで飛び出した荒巻が続けざまに斬り捨てた。

/ ,' 3 「引家どの。まずは殿を」

(;-_-)「む、そうじゃな。御付きと我らだけでお護りしながらここを出るぞ…… 杉浦!」

駆け寄る杉浦を見つけ引家が少し安堵した様子を見せる。

/ ,' 3 「む……」

荒巻が杉浦の前に立ちふさがった。

( ФωФ)「……どけ」

キィン

独特の高い音を出して刀が交わる。

(;-_-)「杉浦……貴様!」

( ФωФ)「やはりお主は騙せぬか。老いぼれは退け」

/ ,' 3 「ほっほっ。そのように殺気だっておってはの。悪いが退けぬな」

荒巻が刀の持ち手をくるりと捻り杉浦の斬り込みを受け流した。
杉浦が後ろに跳ぶ。
かつての藩を代表する剣豪が睨み合った。

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:38:39.95 ID:xjC3Um/HO
(;^ω^)「先生!」

( ,_ノ` )「どこを見ておる……」

(;^ω^)「くっ!」

内藤の身体を冷や汗が伝う。
渋沢は茂良に突き刺した刀を一度音を立てて振るうと血を切った。

その慣れた動作、纏う殺気が幾人もの人斬りを行ってきたことを容易く連想させ内藤はたじろいだ。

(;^ω^)(刀を……誰か)

ジリジリと後退りながら辺りを探った。
周りは未だ混乱に包まれ、あちらこちらで斬り合いが行われている。
しかも内藤の前には渋沢がいる。刀が置いてある小屋まではあまりにも遠かった。

(;^ω^)「初めからこれが目的だったのかお!」

少しでも時間を稼ごうとした。
しかし渋沢は無言で距離を詰める。口がカラカラに乾いていた。

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:40:27.48 ID:xjC3Um/HO
(;^ω^)「おおっ!」

意を決して内藤が竹刀を打ち込んだ。
渋沢はそれを刀で防ぐ。
竹刀が刀に食い込み突き刺さった。

(#^ω^)「おおおっ!」

(; ,_ノ` )「くっ」

すぐさま内藤が腹に前蹴りを放つ。
渋沢はよろめきながら数歩後ろに下がるが、その顔を楽しそうに歪めた。

(;^ω^)(しまったお)

内藤の竹刀は刀に刺さったままである。
ぶらぶらと揺れる竹刀を振り落とすと渋沢がゆっくりと近づいてきた。

(;^ω^)(逃げるか…お。しかし殿を置いて逃げる訳には)

考えている間にも渋沢は淡々と距離を詰める。

(;^ω^)(くっ!!)

内藤は死を覚悟した。
その時



('A`)「内藤!これを使え!!」

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:41:42.39 ID:xjC3Um/HO
何時の間に来たのか。
振り向くと汗だくになった欝田が立っていた。

(;^ω^)「何故ここに!?」

('A`)「話は後だ!俺は殿をお守りに行く。
   そいつは任せたぞ!」

言い放ちながら欝田が刀を振り上げ駆け出した。
内藤は渡された刀を素早く抜く。磨き上げられた刀身が現れた。

('A`)「そいつは新調したばかりだ!大事に扱えよ!」

思い出したように欝田が叫んできた。
内藤は刀を強く握る。
欝田の呑気な言葉が先ほどまで死を覚悟していた内藤の心を落ち着かせた。

( ^ω^)「おう!そちらは任せたお!」

場内に響き渡る声で応えると渋沢に向き直る。

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/09(火) 01:43:41.16 ID:xjC3Um/HO
渋沢は笑みを消し、相変わらずの無表情に戻っている。
その顔には動揺の色など全く見られない。

( ^ω^)(茂良どの……)

ここに来てようやく内藤に沸々と怒りが沸いてきた。
ちらりと茂良を見るとうつ伏せに倒れた身体に血だまりが出来ている。

( ^ω^)(さぞ無念であったろう…勝負の最中、後ろから斬られるとは)

内藤は青眼に構えると刀越しに渋沢を睨み付け口を開く。
それは重く明確な意志が込められていた。

( ^ω^)「お主を…斬るお」

( ,_ノ` )「ふん」

渋沢は刀を鞘に収め居合いの型をとる。

先程まで吹いた風はいつの間にか止んでいた。



続く



(;'A`)(奮発して三両もする刀を買うんじゃなかった)
(;'A`)「内藤!頼むぞ!」

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