- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/23(火) 23:29:31.80 ID:rbNkbUKtO
- 【第十七話 必死】
怒号と悲鳴の響く場内。
欝田は方々で行われる斬り合いを横目に、一直線に藩主を目指し駆けた。
('A`)「ちっ。 敵が分からぬ」
欝田は小さく舌打ちをする。
そもそも欝田を始め、藩主側の人間には謀反人を見分ける術がない。
そのためむやみに斬り付けることもできず、
ただ襲い来る相手から身を守ることしかできずにいた。
しかしその中で一つだけ分かっていることがある。
('A`)(殿はご無事か……!)
敵の狙いが藩主の命ということである。
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/23(火) 23:31:46.22 ID:rbNkbUKtO
- 御前では一際激しい斬り合いが行われていた。
(;'A`)「先生!」
荒巻と杉浦が刀を構えて睨み合い、
その後ろで引家を始めとする藩主の御付きが必死の形相で刀を振りかざしている。
/ ,' 3 「殿をお守りするのだ!こやつはわしが相手をする」
こちらを見ずに荒巻が怒鳴った。
欝田は一瞬とまどったが瞬時に自分の役目を理解する。
('A`) 「はい!」
素早く欝田が藩主に駆け寄る。
しかし振り返った引家に刀を向けられた。
その顔は怒りと焦りでひどく歪んでいる。
('A`) 「引家様!加勢に参りました!」
(;-_-)「む、お主か。荒巻の弟子であったな。ならば……
とにかく近寄る者は斬り捨てるのだ!殿をお守りさえすればよい!」
言い終わらるうちに二人の男が襲い掛かる。
(#'A`)「おおっ!」
力強く地面を蹴ると、欝田は男達に斬り掛かっていった。
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/23(火) 23:33:28.95 ID:rbNkbUKtO
- 一方、杉浦は欝田が男を難なく斬り伏せるのを目の端で捉え軽く舌打ちをした。
( ФωФ)「ご自慢の弟子というところか。まあ良い。誰一人として生かすつもりは無い」
/ ,' 3 「ほっほ。あまり舐めてかからぬことじゃな。あやつらは強い。
わしら年寄りの時代などとうに終わっておるよ」
( ФωФ)「一緒にするでない!我が輩にはまだやらねばならぬ使命があるのだ。
……貴様にはここで引導を渡してくれるわ」
/ ,' 3 「ふむ。それは有り難いの。死に場所を探しておったところじゃ」
(#ФωФ)「口の減らぬじじいめ…」
杉浦は構えていた刀をするりと上段に掲げる。
そのまま疾風の勢いで荒巻との距離を詰めた。
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/23(火) 23:35:05.22 ID:rbNkbUKtO
/ ,' 3 「ほっ!」
鋭い刀身が迫る。荒巻は軽い気合いと供に受け流しつつすれ違った。
振り向きざまにすぐに刀が交わる。
杉浦の鋭く強烈な打ち込みに対し荒巻は老練な刀捌きを見せる。
(#ФωФ)「ふんっ!」
躱せずに受けた斬り込みがわずかに荒巻の体勢を崩した。
身体を捻りつつ横っ飛びに避けるが、白刃が荒巻の腹を掠める。
じわりと血が着物を赤く染めた。
傷は浅くない。
( ФωФ)「終わりだな。かつての天才も老いればこの有様か…
死ぬ前に答えろ。貴様が若き日に編み出したという秘剣…存在するのか」
/ ,' 3 「…ほっほ。そんなものもあったの。
近頃は物忘れがひどくてとうに忘れておったわ」
( ФωФ)「もうよい……死ね」
静かに言い放つ。
杉浦の殺意のこもった斬り込みが力なく身体をかがめる荒巻を襲った。
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/23(火) 23:36:39.91 ID:rbNkbUKtO
- 瞬間、荒巻の身体がぬっとせり上がると、目に止まらぬ速さで刀が下段から跳ね返った。
きらりきらりと二度白刃が輝く。
両者が動きがぴたりと止まった。
巻き起こった砂煙が収まると、荒巻の背中から剣先が顔を覗かせていた。
( ФωФ)「これが秘剣か……世に出ぬ理由が分かったわ…
…まさか…必死剣とは…な」
杉浦がどしりと膝を着く。
つられるように荒巻も力なく倒れこんだ。
/ , 3 「供に逝ってもらうぞ。なに、知らぬ仲で無し。かつての同門じゃ……
すまぬな……」
( ω )「ふん…」
今度はゆっくりと杉浦の身体が後ろに倒れこむ。
同時にぱっくりと開かれた腹から血が勢い良く溢れだしていった。
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/23(火) 23:38:42.43 ID:rbNkbUKtO
('A`;)「先生!」
欝田は斬り掛合っていた男の刀を思い切り跳ね上げると腹に蹴りを見舞う。
蹲る男を尻目に荒巻に駆け寄った。
頭を抱えこみ師の名を叫ぶ。
しかしその口が開くことは無かった。
('A`)「……」
荒巻の身体から刀を引き抜くと、ゆっくりと横たわらせる。
ごつごつとした岩のような手から刀を引き剥がし強く強く握り締めた。
(#'A`)「はあっ!!」
一閃。
振り向きざまに横になぎ払う。
刀を振り上げた男がそのままの体勢で崩れ落ちた。
再び荒巻に視線を戻す。欝田の目には不思議と怒りも悲しみも無い。
('A`)(安らかなお顔をしておる…)
刀に一生を捧げた男の堂々とした名誉の死。
欝田は同じ侍としてどこか羨ましいとさえ感じていた。
短く手を拝わせ、再び斬り合いの場へと向かう。
その手には荒巻の刀が握られている。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/23(火) 23:41:14.94 ID:rbNkbUKtO
- 軽く辺りを見回すと、少しずつだが藩主側が落ち着きを取り戻しているのが分かった。
ちらほらと側近が藩主の下に近寄り、油断なく刀をかざしている。
('A`)「……!」
不意に五、六人の集団が白幕をくぐり殺到した。
欝田以外気付いている様子は無い。
('A`) 「後ろです!ご用心を!!」
素早く駆け出すが、御付きが一人後ろから斬られるのが見えた。
藩主自ら刀を抜き、必死で抵抗するが押されているのが分かる。
('A`)(手練の者を用意しておったか…!)
駆けながら欝田は瞬時に一番腕の立ちそうな男を見破った。
体格が良く力のありそうな男が引家を押し込めている。
気合いを発し欝田が横から斬り込むと男は後ろに跳びのいた。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/23(火) 23:42:22.40 ID:rbNkbUKtO
('A`)「こやつは拙者が。引家様は殿を」
(-_-;)「む…任せたぞ」
苦しそうに引家が後ろに引いた。
その顔には血の気が無く相当衰弱しているのが分かる。
青眼に構えると欝田は正面に立つ男を睨み付けた。
刺客の腕は確からしく、その身体から並々ならぬ気を発している。
('A`)(強いな…しかしあまりてこずる訳にはいかぬ)
必死で戦ってはいたが、一人、また一人とこちら側の人間が倒れていく。
突然の奇襲に藩主側の疲労は濃い。
欝田はじりじりと男との距離を詰める。
(#'A`)「おおっ!!」
お互いの間合い入ると腰を据えて待ち構える男に鋭く斬り込んだ。
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/23(火) 23:44:53.14 ID:rbNkbUKtO
- 男は見事な引き足を見せると、欝田の刀をいなしつつ面を放ってきた。
('A`;)「ちっ!」
焦りから若干うわずる。
その隙を見逃さず斬り込まれ浅く肩を斬られる。
('A`)「……」
欝田は距離を置くと深く息を吐いた。
ゆらりと足を右に移す。
次に左。
ふらりふらりと足を運び、男の固い守りの隙をうかがう。
武雲流において千鳥と呼ばれる足裁きである。
動じずに身体の向きを欝田に合わせ睨み合うが、男にもまた刺客としての焦りがあった。
堅牢な受けの構えを解くと、動きを予測し逆に欝田に斬り込む。
('A`#)「おおっ!」
欝田は瞬時に足を逆に運ぶとその身体を受け流しつつ男の腹に刀を滑らせる。
男は声も無く倒れこんだ。
すぐさま欝田は血で斬れなくなった刀を隣に投げつける。
御付きを今まさに斬り捨てようとした男が怯むのを確認すると
倒れた男から刀をもぎ取った。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/23(火) 23:45:55.57 ID:rbNkbUKtO
('A`#)「死力を尽くせ!義は我らにあり!賊などおそるるに足らぬわ!」
威勢良く叫ぶと応えるように各々が気勢があげた。
欝田が鮮やかに男を斬り捨てたことが、藩主側の力にもなったようである。
流れが変わった。
('A`)(……こちらはどうにかなりそうだな)
油断なく辺りに目を配りながら内藤を思う。
荒巻のことから、ちらと加勢に行くことを考えるがすぐに思い直した。
('A`)(俺があいつを信じなくてどうする)
未だ場は混乱が続いている。
むせ返るような血の匂いの中、欝田は刀を振るい続けた。
続く
(´<_` )「なにやら騒がしいな」
( ´_ゝ`)「む。ではちと覗いてくる」
次へ/
戻る