9 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:08:53.23 ID:vjOn+Ksc0

(ヽ ゚ω゚)「は、腹減ったお…」

(ヽ'A`)「お前…もうちょっと考えて食糧食えよ…」

(ヽ ゚ω゚)「ドクの太股、焼いたら美味そうだお…。
        フヒヒッ…フヒヒヒッ」

(ヽ'A`)「お前の腹の方が絶対美味いぜ」


ツンはあれ以来、救難信号を出したまま表に出てきていない。

責任を感じているのと、弱っていく二人を見ていられないのだろう。

食料はとうに底を付いていた



11 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:09:47.10 ID:vjOn+Ksc0

(ヽ'A`)「俺の悪運もこれまでかね」

(ヽ^ω^)「なんだか…」

(ヽ'A`)「ん?」

(ヽ^ω^)「この状況、デジャヴだお…。
        前にも同じ状況になったことがあるような…」

(ヽ'A`)「前にも?そう言えばブーンは、うちに来る前は何やってたんだろうな?」

(ヽ^ω^)「…前?何を…?」

(ヽ'A`)「案外、記憶を失う前には宇宙を飛んでたりしてな、はは」

(ヽ ゚ω゚)「…飛ぶ、失う?…記憶」



12 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:10:25.11 ID:vjOn+Ksc0





─wwヘ( ゚ω゚)√レvv〜─!







15 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:11:20.20 ID:vjOn+Ksc0


(ヽ ゚ω゚)「ああっ、ああぁぁぁ」

(;'A`)「どっ、どうしたブーン!!大丈夫か!?」


ブーンが頭を両手で押さえ込みうずくまる。

やがて顔色が真っ青に変わり、青筋が浮かび上がる。




(((ヽ ゚ω゚)))「ド……クオ、助け……苦……しっ」

(;'A`)「お、おい…」


------------


('A`)「いいか、俺もすぐ追い付く。お前は先に宇宙で待ってろ」


-----------



16 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:12:31.27 ID:vjOn+Ksc0


(((ヽ ゚ω゚)))「ドクオ……すまないお…約束…守れそうにない…お」

(;'A`)「おいブーン、しっかりしろ!約束ってなんだ!?」


ドクはどうしていいのか分からず、
オロオロするばかりだったが、

やがてブーンの震えが止まり、一点を凝視したまま呟きだした。


(ヽ ゚ω゚)「そうだ……僕は…月を目前にして……」

(;'A`)「……」




17 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:13:53.31 ID:vjOn+Ksc0





(ヽ ゚ω゚)「死 ん だ ん だ お」






ガガガン



その瞬間大きな音を立てて、機体に衝撃が走った。


19 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:15:09.02 ID:vjOn+Ksc0


(((;'A`)))「のわっ!?」


(((ヽ ゚ω゚)))



ドクは急激な衝撃に耐えるほどの体力も残っておらず、
そのまま横の機材に頭を打ち付け、床に倒れこんだ。


(メメ'A`)「ぐぅぅ…」


一瞬の出来事に、ドクは上下左右も分からなくなったが、
頭から生温かい液体が顔を伝うのは感じられた。



20 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:16:11.64 ID:vjOn+Ksc0


『……!……!』

ζ )ζ「……!!」

『…!!……!』


何やら雑音が聴こえるが聞き取れない。

やがて目の前が次第にボヤけ、白く染まって行く。


(メメ'A`)(ブーン……死んだって……どう言う……)


そして何も見えなくなった。




22 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:18:09.37 ID:vjOn+Ksc0





('◎`)「おぎゃー」(腹減ったー)

ノノ;'A`)「クー!助けてくれ、ドクが泣きやまん」


父ちゃん、俺は腹が減ったんだよ!
早く飯にしてよ。


川 ‐ )「ドクオ、それはお腹が空いた時の泣き方だ。
        いい加減覚えろ」


流石母ちゃん!わかってるぅ。


23 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:18:54.58 ID:vjOn+Ksc0

あれ?母ちゃん?


顔がボヤけて見えないや。


それよりも、飯!飯!


川 ‐ )「ほら、ドク。ご飯だぞー」


待ってました!



差し出された哺乳瓶をくわえようとした途端、

それを持ったクーが少しずつ遠ざかる。



24 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:19:29.14 ID:vjOn+Ksc0

('A`)「父ちゃん!母ちゃん!」


必死に手を伸ばすが、やがて見えくなった。


(;'A`)「はぁっ、はぁっ」


何もない空間を宛てもなく走り続ける。



(;'A`)「俺は…俺はっ……」



26 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:20:19.14 ID:vjOn+Ksc0




( ゚A゚)「腹が減ったんだよぉぉぉぉ!」


( ´_ゝ`)「……」


(;'A`)「あ、あれ?」


目が覚めたのはフカフカのベッドの上だった。


( ´_ゝ`)「やぁおはようドク君」

(;'A`)「え…?あ…」


いまいち状況が把握できない。


28 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:21:58.04 ID:vjOn+Ksc0


( ´_ゝ`)「君はね、丸三日眠ったままだったんだよ。
        私はDr兄者、医者だよ」


眠ってた?

少しずつ記憶が繋がり思い出されて行く。


('A`)「ッ!ブーンは?あいつは無事なのか?」

( ´_ゝ`)「……」


医者らしき男はドクから目をそらしうつ向く。


('A`)「答えろッ!ブーンは何号室だ!?」


襟を掴み言い寄る。


医者はドクとは目をあわせないまま静かに言った。


30 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:23:11.00 ID:vjOn+Ksc0


( ´_ゝ`)「444号室だよ」


(゚A゚)「ッ……」


言い知れない不安を感じとったドクは、
点滴の管を強引に引っこ抜くと部屋を飛び出した。


(;'A`)「ブーンッ!」


血は繋がっていないとは言え、身内は既にブーン一人。
ブーンを失ってしまったら一人にぼっちになってしまう。

父を失った悲しみも、寂しさも、ブーンの存在があったからこそ乗り越えられた。


(;'A`)「……」


444号室の前で取っ手に手を掛け動きが止まる。

正直、中を見るのが怖かった。


31 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:24:12.54 ID:vjOn+Ksc0

そのまま固まっていると、ポンッと肩に手が置かれた。


( ´_ゝ`)「……」


先生は黙って頷く。


('A`)「……」


ドクも黙って頷き扉をそうっと開いた。



32 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:25:03.39 ID:vjOn+Ksc0


        /  /二__,--、r'"___、 ヾト、.ヽ
        レ'"~,-,、 !  ! ' '" ̄ .ノ\ヾ:、
        K/ー'~^~_/  ヽミ:ー‐‐'"  ヽ i
        !〉ー―'"( o ⊂! ' ヽ  ∪ Y」_
        i ∪  ,.:::二二ニ:::.、.      l
        !    :r'エ┴┴'ーダ ∪   ! !l
        .i、  .  ヾ=、__./      ト=.  <  ハムッ ハフハフ、ハフッ!!          
       ,-'⌒`ー-'´ヾ―    .ノ  ノ
       ヽ、_,,,、-、/ミ,ヽ  ノ   `l,,、    
           ^〜、 ̄r'´ ̄`''jヽ、  〃ヾ 
             /  ヽ´{ミ,_   ̄`'''-ヽ   
 )   ハ  7   /  / `'='´l  ̄i'-、_,,ン
 )   フ  て  /  /   !。 l  l
 7   ッ  .(__ヽ、__l ___ .!。 l__l__,-=-,___
  )   !!  ( ,-=-, ∠ヾゞゝヽ ,-≡-,l  l-=二=-,
  ^      └==┘   ̄ ̄ ̄ ヽ==ノヽ=ノ\__/



34 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:25:50.64 ID:vjOn+Ksc0



    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
   /              ヽ
  / /        \     'i,
 i     /ヽ             l …………。
 l      /;: ::ヽ          i
 i     ./;: :: :: :ヽ        /
  ヽ  / ̄ ̄ ̄ \        /
   ヽ            /





36 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:26:38.31 ID:vjOn+Ksc0

 _ _               __
 |主 | 、ノ | --|- ヽ/// ,フ_   |ニ|ヽヽ.ノ ┌┼┐ノ十ノヶ┐斤_.斤           「!
. llll亅|/ヽ l, 丿 フヾ.ヽ c_,ノ ノ 亅|.メ | | ,人亅.ー|‐ノノ亅 |三| つ ・・・・・・・・・ o
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                     ,. -─- 、
                   /./ ̄\  ヽ._ -‐ 、
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                / /  | \   !}  v v ,. -=キ十      ……!
                ,. - .ヽ.  !  ヽ、 |! u  /'´_v| |
                   | ,.‐、| |uヾ:ヽ. o }|`ll ;∠-‐'' ̄,ラ | L_
              | |‐、| | /|ヾミ三シ/ ハ o  ./;; | /ヽ.}
              | !._,| | |∧ \_ノ } }u゙ミ三彡'  |./V./
               ,ノ`ー|/ |∨ヽ、l  / .ノ   =' ノ| |l‐//     ←注)ブーン
             ,∠.-┐〈   N\/`\| {__ノ__,/l/! /'ー ' |
        __ ,r(ノ  / |  |  U∨ /ヽ/ゝ-1__|_」/l/〈 ,イ\|
.  /r'⌒`ー-'   ヽ. ,' |  |   U`ー、/ 7~゙|__.|_」/J'/ | |  \
. /  ) ハムッ    )   |   ヽ、u   _ ̄ ̄  v' / )、|
/  (    ……!( l  |    | `ヽ、  ̄ ̄ ,. ‐i´  ,ノ  ` 〜〜〜 、
     ` ー-''⌒ ー- 'l.   ||    ト、  \__,. ‐'´  |   {  ハフハフ…  ハフッ!!)
           │   ||   |ヽ\     r‐;'ニ|   `i ー-〜ー--‐'




38 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:28:01.13 ID:vjOn+Ksc0


    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
   /              ヽ
  / /        \     'i,
 i     /ヽ             l …………。
 l      /;: ::ヽ          i
 i     ./;: :: :: :ヽ        /
  ヽ  / ̄ ̄ ̄ \        /
   ヽ            /



39 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:28:42.82 ID:vjOn+Ksc0

r―――――――――
| おっ、ドクじゃん
`ー―――‐v――――

    /\___/ヽ
   /⌒   ⌒::::::: \
  | (●),   、(●)、 .::|
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  |   `ト-=-イ ' ..:::::::|
   \  `ニニ´  .:::::/
  / `ー‐--‐‐―´ \



40 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:29:42.77 ID:vjOn+Ksc0


( ^ω^)「おいすー」

(;'A`)「何がおいすーだよ…人がどんだけ心配したか…」

( ^ω^)「次のフライトまでに体力つけなきゃならんお」


次のフライト…
そう、まだ終わっちゃあいない。


('A`)「……そう……そうだよな!
    この失敗は必ず取り返す!」

( ^ω^)「おっおっ」


ひたすらに前向きなブーンを見て、救われた気がした。


43 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:31:38.94 ID:vjOn+Ksc0


('A`)「ホッとしたら俺も腹が減ってきたぜ!
      先生、いつ退院できますか?」

( ´_ゝ`)「……そうだな。特に外傷も酷くないし、
        簡単な検査をして明日には退院できるだろう」

('A`)「そうと分かれば、俺も体力戻さなきゃな」

( ^ω^)「退院したら直ぐに計画を練るお!」

('A`)「オッケー!それじゃあな」


ドクは部屋から出ると軽い足取りで、自分の病室へと向かう。


( ´_ゝ`)「……」


45 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:34:18.40 ID:vjOn+Ksc0


('A`)「先生、俺も食事取っていい?」

( ´_ゝ`)「……」

('A`)「先生?」

( ´_ゝ`)「ん?ああ、直ぐに用意させよう」

('A`)「ありがとうございます!もう何日も食べてないから腹ペコっすよ」

( ´_ゝ`)「……」


嬉しそうに話すドクを見る目が辛そうだった。




46 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:35:24.36 ID:vjOn+Ksc0


だが伝えねばならない。



( ´_ゝ`)「なぁドク君、ブーン君の事だが…」

( A )「……分かってます」

(;´_ゝ`)「え?」


何も言っていないが、思わぬ返答に面食らった。


( A )「ブーンが普通じゃないって位気付いてます」


ドクは振り返らず、肩を揺らす。


( A )「ブーンは…何かの病気なんですか?
    俺から見たって普通じゃない…」

( ´_ゝ`)「ふむ…」


49 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:37:13.32 ID:vjOn+Ksc0


( A )「あいつの身内は俺だけだ。
     俺がしっかり診てやらないと…」


声も体も震えていた。


( ´_ゝ`)「そうか…」


と兄者は一言だけ言うと、淡々と告げた。


( ´_ゝ`)「ブーン君の細胞の成長が異常な値を示している。
       矛盾した話だが、細胞の成長に細胞自身が付いて行けてない状況だ。
       その弊害なのか多重人格者の症状が出ている」


多重人格

その言葉を聞いた時、内心ギクッとした。
思い当たる節が…ある


51 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:39:42.07 ID:vjOn+Ksc0

( ´_ゝ`)「その症状が出るときブーン君は、我々の想像を絶する頭痛を体験してるだろう。
       脅す訳じゃないが、痛みでショック死してもおかしくは無い。
       現在は薬で症状を抑えているが、発作が不定期で起こるため
       手の施しようが無い」


( A )「…じゃぁ、どうしろって言うんですか?」

( ´_ゝ`)「症状が出たら薬を飲め…としか」

(゚A゚)「っざけんな!」


分かってる、頭では分かってる。
この医者を責めても何の解決にもならないし、
この人には責任すらない。


54 :通訳(福島県):2007/04/28(土) 21:40:58.10 ID:vjOn+Ksc0

(;A;)「そんな苦しみをこれからも味わえってのか?」

( ´_ゝ`)「……すまない」

(;A;)「あいつが…可哀想だ…」


血は繋がっていない。

だが、お互いしか頼るものが居ない。

寂しさ、悲しさ、嬉しさ、楽しさ
短い間だが、濃密に共有してきた。

それだけに、ブーンの苦しみは…辛かった。







28話完



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