5 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:33:18.53 ID:nY9+tdBJ0


32話



(;'A`)「死…死んだ?」

(´・ω・`)「あぁ、回収作業中に…隕石に衝突した」

( ,,゚Д゚)「はっ、随分と初歩的なミスだな」

(´・ω・`)「コロニーに着くまで…息はあった。
       だけど、さっき医務室で…逝ったよ」

('A`)「そん…な」


ドクには師と呼べる人が3人いた。


頭脳派で機体や設備に詳しいショボン

技巧派で操縦が巧いギコ

そして、船外活動を得意とし
いつも笑顔で変わらず自分に接してくれたジョルジュ。



6 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:33:55.41 ID:nY9+tdBJ0

('A`)「もう…会えない?」

(´・ω・`)「……あぁ」

( ,,゚Д゚)「……」




-----------------------------------


  _
( ゚∀゚)「おードク!来たんならコーヒー淹れてくれ」



-----------------------------------



7 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:34:57.27 ID:nY9+tdBJ0


(;A;)「……」


止め処なく涙が零れ落ちた。

あの笑顔がもう見れない。

あの悪態ついた声も聞けない。


(´・ω・`)「僕は…疲れた…休ませてもらうよ」


そう言うと、ショボンはたどたどしい足取りで帰っていった。



8 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:36:03.49 ID:nY9+tdBJ0

( ,,゚Д゚)「あのコンビがミスを犯すか…」

( A )「……」

( ,,゚Д゚)「いいか、覚えておけ。あれ程のダイバー達が、
     死と隣り合わせてまでも欲しい物が、お前の今いる地位だ」

( A )「……」

( ,,゚Д゚)「まぁ…今回で交代になるがな」


勿論、自分も死は常に覚悟している。

だが、身近な存在がいなくなってしまうと
「何故そこまでして」という念が湧き上がる。

矛盾した話だが、ドクは率直にそう感じた。



10 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:37:36.78 ID:nY9+tdBJ0

( ,,゚Д゚)「さて、2日後が楽しみだな」


ギコはそう言い残すと、まるで何事も無かったかのように
スタスタと歩いて去っていた。


( A )「作業…しなきゃな」


強くならねば。

強い心を、鉄の心を。



もう悲しまなくていいように




11 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:40:06.86 ID:nY9+tdBJ0




2日後



( ^ω^)「いよいよ、発表だおね」

('A`)「あぁ」


最終成績の発表は、ダイバー協会の本部にある電光掲示板にて行われる。

今までは、ドクオが当たり前のように一番上に表示されていたが、
今回は違う。

3組のダイバーがTOP争いしていた事もあり、
他ダイバーも興味を持ったのか、掲示板のあるフロアは人でごった返していた。

現在も下位からの発表が続いている。



13 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:41:48.30 ID:nY9+tdBJ0


( ,,゚Д゚)「プレッシャーで来ないかと思ったぜ」

('A`)「ギコさん!」

( ^ω^)「おっ」

( ,,゚Д゚)「ショボンの野郎が…いねぇな」

('A`)「……」


後から聞いた話だが、KSMS号はβ星雲に行っていたらしい。
β星雲の危険度は、他の危険地域とは比べ物にならない。

過去のフライト経歴を見ても、生還したものはドクオのみ。

今回、ショボンが2人目の生還者だ。



15 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:43:31.53 ID:nY9+tdBJ0



('A`)「β星雲…」

( ,,゚Д゚)「おっと、そろそろTOP10だぜ」


全員が、掲示板に見入る。

TOP3までは安心して見ていられるが、
順位が近づくにつれ心臓が高鳴り、汗が滲み出てくる。


(;'A`)(大丈夫…大丈夫なはずだ)







17 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:45:26.67 ID:nY9+tdBJ0






No.3 ドク・ニート (レオパルトU、パートナー:ブーン・ノーベル)





( A )


( ゚ω゚)



( ,,゚Д゚)(よし!)






18 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:46:44.62 ID:nY9+tdBJ0


No.2 ギコ・ハニャーン (トレジャー・キャット パートナー:しぃ)





( ,, Д )   ゚ ゚






21 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:48:05.64 ID:nY9+tdBJ0


No.1 ショボン・荒巻 (KSMS パートナー:無)




「おぉぉぉぉぉ!!!」
              「逆転だ!」
      「ショボンか!」


ざわめき立つ周りを他所に、当人は唖然としてしまっている。


( ,, Д )「馬鹿…な」

( A )「負け…た」


そして、TOPを飾った本人。
ショボンは姿を見せていない。


23 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:50:20.63 ID:nY9+tdBJ0


そしてモニター越しにその結果を眺めるものがいた。


ミ,,゚Д゚彡「ギコは2位…か」


ダイバー協会の会長として、最も阻止したかった事。

『しぃ、そして息子・ギコの No.1 奪取』

それは回避されたが、思惑通りでは無かった。


ドクという、協会にも政府にも害の無い奴にNo.1をキープさせ、
波風立たせずに済ます腹でいた。

しかし、実際にはショボンという腹の読めない男に取られてしまった。

あまつさえ、ギコを抑えきれず3位という結果。



25 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:52:30.55 ID:nY9+tdBJ0


ミ,,゚Д゚彡「やはり無理があったか」


来期の対策も考えなければならない。

適任という意味では、ドクオの息子であるドクは間違いない。
たが、今後もブーンをパートナーとして飛び続けるだろう。


ミ,,゚Д゚彡「来期を視野に入れるのならば、やはり熟練ダイバーを付けたいな」



あいつは


邪魔になるな



フサギコの頭の中は、いかにしてブーンを排除するか。

に切り替わっていた。



28 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:54:44.53 ID:nY9+tdBJ0



【2038年 最優秀ダイバー ショボン・荒巻】


至急、ダイバー協会本部会長室まで赴くように



通達が表示された。


('A`)「最優秀ダイバーか…」


確かにドクオがいない今、良く考えてみれば
現存するダイバーの中で、ショボンは抜きん出ているように思えた。

だが、父の後釜に自分が座れなかった。

その悔しさだけは、相手がショボンであっても拭い切れない。



29 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:56:51.09 ID:nY9+tdBJ0



( ,,゚Д゚)「しぃ…」


ギコもまた、己の目的を果たせなかった。

そして大切な人の期待を裏切ってしまった。


( ,,゚Д゚)「終わった…か」


ギコはそう一言呟くと、精の抜けた顔をして、
歩いて行ってしまった。



32 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 19:58:47.70 ID:nY9+tdBJ0



No.2、No.3 とは、手に入れるものより失うものが多い。


自責・後悔・自信


その念が彼らを襲っている中、当事者はひょっこりと現れた。


(´・ω・`)「……」


館内の見取り図持って歩く姿は、
いかにも協会に来るのは初めて、という様相だった。


('A`)「ショボンさん…」

( ^ω^)「こんにちはですお」

(´・ω・`)「やぁ、ドクとブーンか」



33 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 20:00:49.87 ID:nY9+tdBJ0


なんと声を掛けていいか分からない。

が、当然社交辞令はせねばなるまい。


('A`)「TOP…おめでとうございます」


やはり明るくなんて言える言葉では無かった。

いくら師的な立場の人であろうと、悔しいものは悔しい。


(´・ω・`)「ありがとう」


ショボンもそれを察してか、多くは語らなかった。



35 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 20:03:22.96 ID:nY9+tdBJ0


( ^ω^)「来期こそは必ず巻き返しますお!!」

(´・ω・`)「……」


ブーンの目と言葉には、はっきりと強い意志が見て取れた。


(´・ω・`)「……来期か…」


ショボンが何かを思い出すように目線を遠くへ向けると、
カタカタと小刻みに震えだした。







(;´・ω・`)「…僕は……もう飛べない…」


(;'A`)「!!」(^ω^;)




36 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 20:04:56.29 ID:nY9+tdBJ0




信じられない言葉に、ドクもブーンも言葉を失う。


(;'A`)「な、なんでそんな事を…」

(;´・ω・`)「今フライトは、起死回生を掛けてβ星雲に挑んだ…」

(; ^ω^)「β…」

(;´・ω・`)「確かにあそこはダイバーにとって、宝の山だ。
        だが、それと同時にすべてを失ってしまう」





(´・ω・`)「僕は、ダイバーとしてのプライドも相棒も…失ってしまった」





39 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 20:06:43.55 ID:nY9+tdBJ0


重い、重い言葉がショボンの口から発せられる。

ドクもブーンも、そんなショボンを見て何も言えなくなってしまった。


(´・ω・`)「じゃぁ、僕は会長室に行ってくるよ」

('A`)「…わかりました」


歩いていくのをブーンと2人で見送っていたが、
ショボンは不意に立ち止まり、ドクに向かって言った。


(´・ω・`)「…ドク」

('A`)「?はい」



40 :◆3m0SptlYn6:2007/08/20(月) 20:08:16.65 ID:nY9+tdBJ0



(´・ω・`)「僕は…見たんだ・・・」

( ^ω^)「見た?」


(´・ω・`)「ジョルジュが重症を負い、命からがらβ星雲を離脱する時…
       確かに…見たんだ…」

(;'A`)「……」



(´・ω・`)「レオパルトを…」





32話   〜完〜


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