106 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 17:49:33.28 ID:+4rIL91S0

37話



ドクが部屋を出ると、また先程とは違った空間になっていた。


('A`)「……」


ドクはキョロキョロと周りを見渡す。


('A`)「……あった」


さっき放り投げた無線機が無造作に置かれている。

110 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 17:51:46.67 ID:+4rIL91S0

('A`)「なるほどな」


景観や形が変わっても、結局は同じ場所。
この無線機がすべてを物語っている。

ドクはその無線機を拾い上げるとスタスタと歩き出した。


('A`)(そういうカラクリか……悪趣味なもんだぜ)


今度は迷わずドアに入っていく。

そこには住み慣れた自分の家があった。

112 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 17:54:36.26 ID:+4rIL91S0

('A`)(やっぱりか……)


予想していたかのように、まるで動じないドク。
そして今度は目の前で、どこからともなく砂が集まり、
人の形を成形していく。


ノノ'A`)「……」

('A`)「うん、父ちゃんの番だと思ってたよ」


もう見ることの出来るはずのない、ドクオがそこにいた。


114 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 17:56:44.95 ID:+4rIL91S0

('A`)「人の記憶をスキャンして、立体化させる機能か」

ノノ'A`)「……」

('A`)「過去に捕われた人にとっちゃあ、至福の機能だろうな」

ノノ'A`)「……ドク」


分かっている。
頭では偽者と分かっている。

だがやはり心は揺れた。

116 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 17:58:48.07 ID:+4rIL91S0

もし、これを受け入れてしまったらどうなるのだろう。
記憶と言う、出口のない迷路に飲み込まれてしまうのだろうか。


('A`)「なに?」

ノノ'A`)「元気で……やってるか?」

('A`)「うん……大丈夫だよ」


心がえぐられる様な感覚に陥る。
だが目の前の物体は、自分が連想し、掛けて欲しい言葉を言わせているだけだ。


118 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:01:09.95 ID:+4rIL91S0

('A`)(父ちゃん……)

ノノ'A`)「疲れたろう?そろそろ休んだらどうだ?」


違う!違う違う違う!
父ちゃんに掛けて欲しい言葉。
今の自分に必要な言葉。


(;'A`)「ち、違うよ父ちゃん。
     俺は……俺は」



ノノ'A`)「立派になったな」


('A`)「!!!!」

122 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:02:26.75 ID:+4rIL91S0

この装置を作った奴は悪魔だ。

自分の愛しい人から、期待通りの言葉が聞ける。


想像してみて欲しい。


自分の愛する人、大切に思う人から、
自分と同じ気持を伝えられたら?


それはすばらしい世界で、一歩踏み入れたら抜け出せなく甘美な誘惑。


123 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:03:28.15 ID:+4rIL91S0
(;A;)(ダメだダメだダメだダメだダメだ)


カラクリを知って、尚揺れる心。
身を委ねればどれだけ楽になれるのか……。


ノノ'A`)「さぁ、一緒にフライトに行こう」

(;A;)「ダメだよ父ちゃん……俺はブーンの面倒を見なきゃ…」


ブーン……ブーン




待て!

126 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:04:14.84 ID:+4rIL91S0

まさかブーンも同じ体験をしてるのか?

不味い!ヤバイ!

あいつに過去は……記憶は……。


('A`)「……父ちゃん」

ノノ'A`)「ん?どうした?準備できたか?」

('A`)「……俺……行かなきゃ……」

ノノ'A`)「行く?」

('A`)「ブーンが……待ってる!」

128 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:05:42.33 ID:+4rIL91S0

ドクオに背を向けそのまま部屋を飛び出す。


ノノ'A`)「ドク!」


しかしドクは振り返らず走って行った。


ノノ'A`)「……」


ソレは、ニコリと微笑んだかと思うと、
サラサラと砂になり跡形もなく消えた。




130 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:07:54.87 ID:+4rIL91S0





(;'A`)「ブーン!ブーン!?」


相変わらず無線からは応答が無い。


('A`)「ッチ、やっぱりダメか」


さっきまでは、豪華に飾り付けされたように見えた部屋も、
今のドクには無機質な機械の部屋にしか見えない。

132 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:09:19.48 ID:+4rIL91S0

('A`)「一部屋一部屋、調べていくしかないな」


ドアを開けては中を確認し、また次のドアへと向かう。

その作業を繰り返しているうちに、明らかに違う部屋を見つけた。


('A`)(……これは)


部屋というよりも通路と言った方が分かりやすい。
そしてその通路の奥には物々しい扉が待ち構えていた。


('A`)(先に行ったのか、ブーン)


134 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:10:35.31 ID:+4rIL91S0

ドクは歩き始める。

そして扉の前まで来て、あることに気が付いた。


('A`)「このドアは……」


コロニーで見た記憶がある。
今はなき荒巻研究所のそれに酷似していた。


('A`)「幻……じゃないよな」

137 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:11:53.22 ID:+4rIL91S0

カラクリを理解できてる以上、再度引っかかる程馬鹿じゃない。
あるべく場所にあり、そして中には居るべき奴が居るのだろう。


('A`)「ブーン……先に行くぞ」


ドクは扉を開いた




139 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:14:05.02 ID:+4rIL91S0






('A`)「月に……行けるといいな」


僕の生涯の夢だお!
絶対に実現させてやるお!


('A`)「ブーン!絶対にダイバーになってやろうぜ!」


そうだお!一緒に飛び回るんだお!


141 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:16:21.05 ID:+4rIL91S0

('A`)「内藤……」


ドクオ?

どうしたんだお、そんな悲しそうな顔して。


ノノ'A`)「ドクを……息子を助けてやってくれ」


何言ってるんだおwww
ドクオに息子とか、何年先の話だおww


142 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:17:43.90 ID:+4rIL91S0

('A`)「ブーン!大丈夫か!?」


ドク、心配いらないお。
僕は大丈夫だお。


ノノ'A`)「ブーン、ドクを頼む」


ドクオ、急に老けすぎだおww
何その長髪ww

とーちゃん?
ドクのことは任せてくれお!
絶対に僕が守ってみせるお!

144 :◆3m0SptlYn6:2008/03/10(月) 18:18:50.41 ID:+4rIL91S0


ドクオ?とーちゃん?

親友のドクオ?育ててくれたとーちゃん?


僕は……僕達は……







37話 〜完〜


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