27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/28(水) 01:41:24.77 ID:BPn/mCa2O
月日は20年程遡る。



ブーンはまだ5歳になったばかりの幼稚園児である。
当時から活発な男の子で、両手を翼の様に大きく広げて走る姿から、皆は本名の内藤ホライゾンではなくブーンと呼んだ。

明るい性格とその笑顔からブーンは園内の人気者だった。

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/28(水) 01:42:58.87 ID:BPn/mCa2O
⊂二( ^ω^)⊃「今から僕以外の皆は敵国と見なすおーwww
10秒数える間に逃げるおー。いーち…」

ξ*゚∀゚)ξ「ブーン!」

⊂二( ^ω^)⊃「さーん…」

ξ*゚д゚)ξ「ブーン…」

⊂二( ^ω^)⊃「ごー…」

ξ*゚-゚)ξ「……」


⊂二( ^ω^)⊃「ろー…」


Σ(゚ω゚;)「くぉッ…!!」

ゴスッッという鈍い音と共にブーンが跪く…

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/28(水) 01:45:56.32 ID:BPn/mCa2O
ξ*゚∀゚)ξ「ブーン、遊ぼー」

(;´ω`)「…ツ…ツン…
リバーブローは…素人にしちゃダメだ…」


(;=ω=)「…ぉ……(カ゛クッ)」


ブーンは幾度と無く死線を越えそうになりつつも、ツンとブーン、二人は仲良しだった。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/28(水) 01:48:44.74 ID:BPn/mCa2O
幼稚園からの帰り道、二人は手を繋ぎ、ゆっくり歩いている。

ξ*゚д゚)ξ「あのね、今日ね…ブーンのお家行って良い?」

首を少し傾げツンがブーンに尋ねる。

( ^ω^)「良いおー。どうせならうちでご飯食べてけば良いお」

ξ*゚∀゚)ξ「やったぁ★ブーンのお家のご飯大好き!」

( ^ω^)「トーチャンとカーチャンの作るご飯は世界一美味いお!!」


二人にとってこういう日常がいつも通りのことだった。
両親が共働きで鍵っ子のツンはブーンの家に度々訪れ、夜遅くに母親が迎えに来ることが多く、ブーンの両親はそれを拒むこともなく「娘ができたみたいで嬉しい」と微笑ましく見守っていた。

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/28(水) 01:49:14.44 ID:BPn/mCa2O
ある日、ツンはブーンの前からいなくなってしまった。

当時は理由がよく分からなかったが、ツンの父親の海外転勤が決まり、一家ごとアメリカに引っ越したのだと後に知った。


ξ;;)ξ「ブーン…ブーン…」

寂しそうにブーンの手をギュッと握り、その瞳から大粒の涙をこぼすツン。

それを見ていると泣きそうになるブーンだったがどうにか笑顔を作り、明るくツンを送り出した。

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/28(水) 01:50:35.83 ID:BPn/mCa2O
( ^ω^)「…ツンが帰って来たら、ブーンがツンの大好きな……作るお!!
絶対美味しいの作るって約束するお!
だから泣かないで、また会えるのをwktkして楽しみにしてるお!!」

ξ;;)ξ「………」

ξう;)ξ「うん…」

ξ*゚∀゚)ξ「約束だからね、約束!」


そして二人は指きりをしたのを最後に、20年後の今日まで再会することはなかった。



( ^ω^)「…ツンが好きなものって何だったお…?」

肝心なことが思い出せないブーンは小さく唸ると、仕方なく伝票計算を始めた。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/28(水) 01:56:15.13 ID:BPn/mCa2O
ξ*゚∀゚)ξ「ブーン!昨日マンガでおもしろいこと覚えたよ!!」

( ^ω^)「何だお?教えて欲しいおwww」

ξ*゚д゚)ξ「リバーブロー!!」

Σ(゚ω゚;)「ブォッ!!」

ξ*゚д゚)ξ「ガゼルパンチ!!」

Σ(゚ω゚;)「ペロストロイカ!!!!!1!」

ξ*゚∀゚)ξ「デンプシーロォールだぁぁぁあぁ!!!!」

( ω ;)「(声にならない悲鳴)」


ξ*゚ー゚)ξ「ね★」

(;=ω=)「ね…ね★じゃない…」

( =ω=)「ぉ……(カ゛クッ)」

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/28(水) 02:07:31.30 ID:BPn/mCa2O
( =ω=)「朝日が目に痛いおー…」

翌日。
結局ブーンはあまり眠れなかった。

ツンのこと、店のこと、考えれば考える程深みにはまって行き、気付けば空が明るくなり始めていた。

といっても店を休むわけにはいかず、眠い目を擦りながら開店準備を終え、店を開ける。

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/28(水) 02:08:19.31 ID:BPn/mCa2O
VIP食堂の朝は早く、8時開店である。
これは早朝出勤の会社員のことを考えたベストな開店時間である。

そこから14時まで営業し、一度店を閉め3時間程休んだ後、17時から20時頃まで営業する。

ゆったりしてるようで、これをたった一人でこなすのは生半可なものではない。

高校時代に母を亡くし、2年前に父をも亡くしたブーンは以来、店のことを全て一人で担って来た。

バイトやパートを雇うことも考えたのだが、ブーンは仕事を離れればどうしようもなくダメ人間になってしまう。
しどろもどろな拙い説明を他人にするよりは自分がした方が早いと思い、結局全て自分で切り盛りしている。

44 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/28(水) 02:11:36.53 ID:BPn/mCa2O
「大将、焼き魚定食」

( ^ω^)「あいおっ」

「兄ちゃん、いつもの」

( ^ω^)「へい、VIP定食だおね」

「ス…スペルマ定食とか…」

( ^ω^)「ねーよwww」


彼にとってこの職業は天職であり、これ以外の職は考えられなかった。

( ^ω^)(お客さんが来てくれるから、ブーンが笑っていられるんだお…でも…)

(  ω )(この店が無くなったらブーンは一体どうなるんだお…)


ブーンはあまり意思の強い人間ではない。
焦燥感と不安感でブーンは今にも押し潰されそうだった。

45 :◆YeHeE7t/qo :2006/06/28(水) 02:13:33.48 ID:BPn/mCa2O
('A`)「うぃーっち」

ドクオが決まって訪れるのは、1時半頃。
この時間は昼休みの客も帰り始め、一時閉店前とのこともあり店が最も落ち着く時間である。

('A`)「オヤジ、いつもの」

( ^ω^)「あぁ…樹海定食一丁だおね」

('A`)「……」

ドクオは何も言わず席に着くと、扉がゆっくり開きショボンが入って来た。

(´・ω・`)「ブーン、いつもの」

( ^ω^)「あいお…バーボン定食一丁入るお」

(´・ω・`)「……」

46 :◆YeHeE7t/qo :2006/06/28(水) 02:14:48.42 ID:BPn/mCa2O
サボテンが焼ける音が虚しく店内に響く。

('A`)「ブーン、マヨネーズキモいぐらいかけてくれよ」

( ^ω^)「……」

('A`)「ブーン、おい、ブーン」

( ^ω^)「……」

('A`)「……」

(´・ω・`)「うーん…これは…」

顔は笑顔だが、いつものブーンのノリの良さは皆無である。
ドクオとショボンは顔を見合わせ「ダメかもしれんね」と小さく声を合わせた。

47 :◆YeHeE7t/qo :2006/06/28(水) 02:18:26.55 ID:BPn/mCa2O
( ^ω^)「樹海定食とバーボン定食おまちだお…」

ドクオとショボンの前に差し出されたのは、サボテンが焦げた樹海定食とバーボンまみれのバーボン定食だった。


('A`)(´・ω・`)「コーラコラコラコラ」

( ^ω^)「ぶひ?」

('A`)「ぶひ?じゃねぇよ、ピザ。
サボテン焦げてんじゃん」

(´・ω・`)「僕のも…これは最早ただのバーボンを野菜や肉、味噌汁で気持ち悪く割ったものとしか言い様がないね」

(;´ω`)「すまんかったお、作り直すお」

('A`)「いや、俺は食えるから良いけど…」

(´・ω・`)「僕もバーボン好きだし、いつもサービスしてもらってるからさ…」

48 :◆YeHeE7t/qo :2006/06/28(水) 02:20:00.30 ID:BPn/mCa2O
店にはテレビから流れるワイドショーの音以外、物静かな…何処か重苦しい雰囲気が漂っていた。


( ´ω`)「ハァ…」


ブーンが大きな溜め息を吐くと、ドクオが居ても立ってもいられないように箸を置いた。

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/28(水) 02:21:46.56 ID:BPn/mCa2O
('A`)「おまー…俺が言うのもなんだけどさ、午後店休ににしたら?」

( ´ω`)「…ぉ?」

(´・ω・`)「うーん…まぁ正直こんな調子じゃ午後はマトモに営業できなさそうだよね」

(;´ω`)「そうは言われても簡単に休むわけにはいかないお」

('A`)「いやまぁ、そうだけどさ。お前、よーくこれ見てみ」

と言ってドクオが焦げまくったサボテンステーキと、ショボンの一見味噌汁に見えるが、ただ具が浮いただけのバーボンを見せた。

('A`)「俺はまぁ良いけど…ショボンのこれはねーよwww」

(´・ω・`)「いや、これはこれで美味しいけどね」

50 :◆YeHeE7t/qo :2006/06/28(水) 02:23:15.14 ID:BPn/mCa2O
('A`)「コイツはただの変態だから良いものの、こんな調子で午後営業したら立ち退く以前に店の信用失うぜ?」

(;´ω`)「でも午前は普通に…」

(´・ω・`)「きっと客足が落ち着いて緊張の糸が緩んだんだよ」

('A`)「そうそう。
それにお前目の下クマできてんぞ」

( ´ω`)「アウアウ…」

(´・ω・`)「ブーンさ、荒巻会の会長さんからちゃんと話聞いた?」

( ´ω`)「それが…まだだお…」

51 :◆YeHeE7t/qo :2006/06/28(水) 02:25:19.44 ID:BPn/mCa2O
('A`)「やっぱ直接話聞いといた方が良いんじゃね?」

( ´ω`)「……」

(´・ω・`)「会ったことはあるの?
会ったことはあるけど…その…一応、相手はヤクザだから怖いのかい?」

( ´ω`)「トーチャンが死んでからあまり会う機会は無くなったけど…凄く良い人だお。
ほぼ無償に近い形でここを貸してくれてるお…」

('A`)「それなら尚更聞いといた方が良いと思うけど…」

( ´ω`)「…アウアウ…」

(´・ω・`)「…。
分かった、僕も行こう。一応大体の事情は把握したつもりだし、一人よりも二人の方が良い」

('A`)「じゃ俺も行くわ。乗りかかった舟だ、それにお前ら二人じゃ向こうの意見全部まんま聞いちゃいそうだし」

(´・ω・`)「…これだから、アナーキストは…」

('A`)「あ?ジャパニーズパンクスをナメんなよ」

53 :◆YeHeE7t/qo :2006/06/28(水) 02:27:55.45 ID:BPn/mCa2O
(´・ω・`)「その何にでも抗えば良いなんて考え、こんな時代じゃ通用しないよ」

('A`)「うっせ。言いたいことも言えない、こんな世の中じゃ人間腐っちまうよ」

(´・ω・`)「…どこかで聞いたことあるセリフだね…」

(*´・ω・`)「でも…ドクオのそういうとk」

間髪入れず、ドクオの拳がショボンの鼻に突き刺さる。

('A`)「ま、仕事終わんの5時過ぎだから、ブーンはそれまでちょっと寝てろ」

( ´ω`)「……」

( ^ω^)「うん…二人共本当にありがとうだお」

(´・ω・`)「本当にそう思ってるなら、君の尻の穴を貸s」

間髪入れず、ドクオの人差し指と中指がショボンの瞳に突き刺さる。

('A`)「んじゃこれ食って、ちょっと行って来るわ。
ちゃんと荒巻会には電話しとけよ」

( ^ω^)「分かったお!」



(´ ω `)「目がぁー!!!!目がぁー!!!!」

(;^ω^)(早く帰ってくれお…)

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