- 67 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/28(水) 02:56:17.41 ID:BPn/mCa2O
- 夏も近いせいか、5時過ぎだというのにまだまだ陽が明るく照っている。
ショボンが店の前に着くと、
『諸情事により午後テンキューとさせていただきますお
VIP食堂』
という貼り紙が扉に貼り付けられていた。
(´・ω・`)「ファッキン汚い字ですね」
('A`)「よぉ、来てたか」
ドクオが少し遅れて店にやって来る。
ショボンと同じく店の貼り紙を見て
('A`)「お塩かよ…」
と呟いた。
('A`)「で?ブーンは?」
(´・ω・`)「さっきから携帯にかけてるんだけど、出ないんだよね」
- 68 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/28(水) 02:58:15.39 ID:BPn/mCa2O
- ('A`)「しゃーねーな。こっちだよ」
ドクオは迷わず店の横の狭い路地にスルスル入って行き裏口の戸を開けた。
(´・ω・`)「何で開いてるって知ってんの?」
('A`)「何回か一緒にゲームしたから、上がったことあんだよ。
しかしアイツいつも鍵かけねぇで不用心だな…」
(´・ω・`)「…何だろう…今少し胸が締め付けられた気が…」
('A`)「お前ウホだから、密室はマズいからな」
(´・ω・`)「チッ」
(;'A`)「チッ、じゃねーよ…」
- 70 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/28(水) 03:02:57.85 ID:BPn/mCa2O
- 家の中に入ると、二人は奇妙な音が響くのに気付いた。
ズオォォォォ…
グォオォオォ…
ゴゴゴゴゴゴ…
WRYYYY…
(;'A`)「何だこれ…何か変な生き物でも飼ってんのか…」
(´・ω・`)「僕は最後のイビキの擬音に関してカナリ違和感を感じるね」
──…二階。
( ^ω^)「グゴゴゴゴゴ…ズオォォォォ…ブルァァァァァ…zZZ」
('A`)「やっぱ豚のイビキか」
- 72 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/28(水) 03:05:38.04 ID:BPn/mCa2O
- (´・ω・`)「流石にこれは酷いね」
('A`)「ブーン…コラ、ブーン」
ドクオがベッドを揺すり起こそうとするが、ブーンは全く起きる様子は無い。
( ^ω^)「ムニャ…イソノ君…もう食えないおー…ブルァァァァ…zZZ」
(´・ω・`)「アナゴさんなんだけど食べ物の夢なんだ…」
('A`)「……」
('A`)「アナゴ君…君のリストラ決まったらしいよ…」
Σ(゚ω゚;)「ブォッホッ!!!!mjd!!??」
驚いた顔でキョロキョロと回りを見回すブーン。
そこには呆れた顔で彼を見下ろすドクオとショボンが立っている。
( ^ω^)「……。
あ…ドクオ、ショボン…おはお…」
(´・ω・`)「…。
早く準備しなよ、もう5時半だよ」
('A`)「やっぱアナゴさんもリストラは嫌なんだな…」
- 170 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/28(水) 23:53:03.66 ID:BPn/mCa2O
- ブーンのVIP食堂から電車で2駅、更に歩いて5分のところに、『荒巻会』と大きく窓にプリントされた3階建ての建物が佇んでいる。
('A`)「これが荒巻会…」
(´・ω・`)「立派な建物だね」
( ^ω^)「ここに来るのは久しぶりだお…」
3人は階段を上り、入り口のドアを開ける。
( ^ω^)「おいすー。失礼しますおー」
中へ入ると、意外にも中は閑散とした状態で誰もいる様子は無い…
(´・ω・`)「えらく静かだね…」
( ^ω^)「んー…ブーンは事前に連絡したお」
('A`)「取り立てとか行ったんじゃね?」
- 171 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/28(水) 23:56:37.55 ID:BPn/mCa2O
- ( ^ω^)「これは出直した方が良いかもしれんお…
お土産の茶菓子買うの忘れたから丁度良かったおwww」
と、ブーンが入り口を出ようとした、その時。
(,,゚Д゚)「テメェ等何組の者だ、ゴルァ!!!!」
( ^ω^)「お?」
とブーンが振り向く間も無く、頬をチッと何かが掠った。
それは扉の金具の部分に当たり、カーペットの上にドサッと落ちる。
短刀、所謂ドスだった。
(´・ω・`)「…え、何?このバイオレンスな展開」
- 172 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/28(水) 23:59:06.38 ID:BPn/mCa2O
- / ,' 3「ハッハッハッ!
すまんかったのう、ブーン」
(;^ω^)「もう少しで、すまんじゃ済まんところだったお…」
荒巻会の3階。大きな応接室に3人はいる。
ブーン達の青ざめた顔を見て豪快に笑っているこの男は、荒巻会会長、荒巻スカルチノフ。
御年62歳の元気な爺さんである。
(;,゚Д゚)「っさっせんしたッ!!!!
まさか会長のお知り合いとは思わず、酷く手荒な真似をしてしまい…」
('A`)「まぁ、パンクスな俺にとってアレぐらいまだ軽い歓迎だったけどな」
(´・ω・`)「何言ってんの、今にも泣きそうな顔して「ママ…助けて、ママ…」って言ってたのは誰かな?」
(;'A`)「何のことやら…」
(*´・ω・`)「ドクオって…ホント可愛いよね…」
(;'A`)「キメェwww」
- 173 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/29(木) 00:01:47.84 ID:M+6liYWVO
- / ,' 3「コイツはギコといって、まだこの世界に入って間も無い奴でな…
だからと言ってワシの教育が甘いと言うのには変わりないな…
すまなかった、ブーン」
(;,゚Д゚)「か、会長!!そんな…スンマセン!!!!
自分、エンコつめて責任取りますから!!」
(;^ω^)「わー!止めるお!!ちょっとチビったけどブーンは何とも思ってないから、そこまでしなくて良いお!!」
/ ,' 3「…そうか、ありがとう、ブーン。
ホレ、ギコ。そんな物騒なもんさっさと仕舞ってブーン達に謝らんか」
ドスを取り出しかけていたギコは急いでそれを仕舞うと、深々と頭を下げた。
(,,゚Д゚)「ブーンさん達には大変迷惑をかけ、本当にすいませんでした」
( ^ω^)「良いおー。そんな頭を下げられるとこっちが恐縮するお」
- 174 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/29(木) 00:06:09.77 ID:M+6liYWVO
- (´・ω・`)「…ブーン…例の話」
ショボンが肘でブーンを小突き、小声で話しかける。
( ^ω^)「そうだお…
会長さん、実は今日ここに来たのは」
/ ,' 3「あぁ…言わずとも分かっている…」
荒巻はソファーから立ち上がると、窓の方へとゆっくり歩く。
外はすっかり暗く、街のネオンが明るく光る。
眩しそうに、若干煩わしそうにそれを目を細めて見つめる荒巻。
/ ,' 3「すまん、ブーン。
お前とお前の家族…お前のその友人の様な、あの店を好いてくれてる人達全てに申し訳無いと思っている」
( ^ω^)「……」
分かっていたとは言え、ツンが言ったことが紛れもない真実になってしまったことにブーンは愕然としそうになる。
どうにか自分を保とうと強く握り締められたその手にはジトッとした嫌な汗が噴き出すのを感じた。
- 176 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/29(木) 00:09:46.90 ID:M+6liYWVO
- / ,' 3「…正直話せば、今荒巻会は火の車じゃ…」
/ ,' 3「ワシは自慢じゃないが、殺しや怪しい物の売買には一切手を染めずここまで来た。
しかし…こんな御時世…任侠だけでは銀シャリの食えん時代になったのだ…」
('A`)「…俺頭悪ィからぶっちゃけ聞くけどさ、今回の件でアンタに幾らぐらいの金が行くんだ?」
/ ,' 3「長岡コンツェルンは今や世界を股に掛け、様々な事業を展開している大企業じゃ。
ここぐらいの小さな事務所は数代先まで普通の暮らしができる程の金は流れて来る」
('A`)「結局は金か…アンタ、俺らにとってあの食堂がどれだけ大切な…」
(,,゚Д゚)「客人、失礼ですが口が過ぎませんか…」
/ ,' 3「ギコ。口を慎め。
…ワシなりに分かっているつもりだ…君達にとって、ブーンにとって、どれだけあの食堂が掛け替えの無いものか」
- 179 :◆YeHeE7t/qo:2006/06/29(木) 00:15:19.00 ID:M+6liYWVO
- ('A`)「じゃあ……
…チッ、あぁ…クソッ…」
苛つきながらタバコに火を点けるドクオを横目で見ながら、ブーンは押し黙って強く手を握り締めるだけだった…
(´・ω・`)「会長さん、僕と彼はこの件に関しては第三者でも何でもない。
でも今彼が言った様に、僕らはあの食堂が大好きなだけなんです。
決して野次馬な気持ちでここに来たんじゃない。それだけは本当に分かって下さい」
窓の方を向いていた荒巻はブーン達の方に向き直り、3人の顔をゆっくりと眺めていた。
/ ,' 3「思い出すよ、ブーン、お前の親父がまだあの食堂を開くよりも前のこと。
まだ奴が高級料亭で下働きしてた頃の話だ」
ブーンは荒巻の方を見ず、彼の後ろで明るく光るネオンを眺めていた。
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