- 6 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:34:20.78 ID:4d+G5Ljx0
アナウンサー『こんばんは。BTS夜のワイドコメントショーです。
では早速ですが、今日は元警視庁捜査部の刑事をしていらっしゃった、
コメンテーターのフワ氏においでいただいております。こんばんは』
フワ『こんばんは』
アナウンサー『それでは、早速今日までに起こっている、怪奇事件についての見解を頂こうと思います。
フワ氏は、ここ最近に起こっている、白骨化した死体について、何か接点があると見ていらっしゃるのでしょうか?』
フワ『そう……ですね。今までで報告されている白骨死体は4体です。
1体を除き、全て身元が不明。そして、そろって死後3年前後との報告がされています。
これだけで見てみても、捜査上に何か関連する点が浮かび上がってきてもおかしくはないとされているのですが……』
アナウンサー『はい、はい』
フワ『その接点がですね、全く無いのですよ。
いや、まだその接点が見つけられていない、と言うのが正しい表現かもしれません。
ただ、その身元不明という点と、死後3年という点。
この二つが何か意味を持っていたら、捜査は容易くなっていくのではないかと思われます』
- 8 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:36:51.39 ID:4d+G5Ljx0
アナウンサー『では、これは他殺か、自殺かさえもわかっていない。という事でしょうか?』
フワ『自殺は……有り得ないでしょう。
例に挙げますと、発見されたその1体目。
ウツダ駅地下駐輪場で見つかった、男性の白骨遺体ですね。
こちらだけを見ると、ただの地下駐輪場の一角に、
三年も白骨死体が放置されていたとは思えないでしょう?
そして、あの地下駐輪場は、去年の末頃に、壁の補修工事が行われています。
なので、自殺の点は0に近い。いや、0でしょう』
アナウンサー『……なるほど。
では、これからの捜査はどのようにして行っていくのでしょうか?
さすがにこれが続くと、市民の皆様にも不安が募ると思うのですが』
フワ『そうですね。とりあえず今は、過去の事件との繋がり。
遺体の関連性について詳しく調査しようと思っています』
アナウンサー『わかりました。いち早くこの怪奇事件が解決する事を願っています』
フワ『そうですね。警察から退いた身ですが、私個人としても捜査をしようと思っています』
- 10 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:38:41.58 ID:4d+G5Ljx0
――プツン…。
( ・∀・)「と、世間じゃこういう風に報道がされている」
黒色をした、テレビのリモコンを片手に、モララーは三人に言う。
真剣な目つきをして、一言一言搾り出すように話すその様子は、
今まで以上に余裕が無い状態を表していた。
(#゚∀゚)「それはわかってるんだよ。だからって、なんでこうじっとしてるんだよ!!」
ξ゚听)ξ「……。ジョルジュ、あんたは落ち着きなさいよ。あれから"1週間"ずっとそんな感じじゃない」
(;゚∀゚)「……っ。でもよぉ!!何もしないで、
ずっとこの部屋に引きこもってろってのか!?一週間も経ったんだぞ?
キーマンの体を信用ならねえ奴に渡すなんて……。あんときは確かに賛成したけどよぉ」
ジョルジュがそういった途端。
モララーは壁を大きく叩く。その音は、空間をせわしなく飛びまわり、鼓膜へと伝わった。
( ・∀・)「……あの時"アイツ"にドクオの身柄を渡してなけりゃ、
今頃どうなってるかもわかんねぇだろ。現状維持できるだけ有り難いんだよ」
ξ゚听)ξ「とにかく、二人とも落ち着きなさい。
ミセリだって実質一緒に預かってもらってるのも問題でしょう?
いつまた再発するかもわからないtanasinnがあるんだし」
- 11 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:40:55.65 ID:4d+G5Ljx0
すると、ツンは出口の方へと向かう。
(;・∀・)「お、おい。どこ行くんだよ」
ξ゚听)ξ「家に帰って、仕事よ。これだけ期日を延ばせたのも奇跡に近いわね。
夜に連絡入れるから、何か案を見つけ出して。
そうじゃないと私の出来ることにも限りが出てくるわ」
ハイヒールの音が、地下室に響き、それが徐々に遠のいていった。
残されたモララーとジョルジュは、俯き考える。
自分達に出切ることは何か、と。
( ゚∀゚)「……今晩、か。とりあえず俺は、あの"日記"を洗いなおしてみる。
お前はドクオとミセリの様子、見てきてやってくれ」
( ・∀・)「……おう」
ネクタイをぴっちりと締めなおすと、スーツの上着を肩に掛け、モララーも部屋から出て行く。
すると、ジョルジュがモララーを呼び止めた。
何かと思い後ろを振り返ると……。
(;゚∀゚)「……さっきは、すまんかった」
- 12 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:41:42.48 ID:4d+G5Ljx0
( ・∀・)「……俺もだな。ちょっと熱くなりすぎてたわ」
そうだ……。
冷静さを失っていた。
何があったって、守り抜くと決めたんだ。
その決意を、俺の些細な感情のぶれで失ってはいられない。
( ・∀・)「……俺だ。今からそっちに向かっていいか?」
俺には、俺の『ノルマ』がある。
そうだ。
『ノルマ』があるんだよ。
('A`)にはノルマがあるようです 第6話『心から心へ』
- 14 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:43:18.83 ID:4d+G5Ljx0
――――
―――
――
(;・∀・)「おい。ドクオ。大丈夫か?」
( A )「…………」
その姿は、本当に、芯から力が抜けている。そういった様子であった。
生きているかさえ伺えるかどうかも微妙な程、脱力。
息をしている事、体が温かい事。
これだけが、ドクオを支えていた。
瞼を無理矢理こじ開け、瞳孔を確認するが、完全に意識が飛んでいる。
昏睡状態、という奴なのだろうか?
(;゚∀゚)「おい。ドクオはどうしたんだ?」
(;・∀・)「死んじゃいねぇ……けどよぉ、生きてもいねぇ」
- 16 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:45:38.85 ID:4d+G5Ljx0
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっとあんた達!じっとしてる間なんてないわよ!?」
三人が混乱をしていると、タオルケット一枚を肩から掛けられたミセリが、
フラフラの体を立ち上げながら、ドクオの傍に膝をつく。頬を撫でるように触り、一筋、涙を流すミセリ。
ミセ*;ー;)リ「……ごめっんなさい……。私のせいで……私が……」
場に流れる、どこか重々しい雰囲気、空気。
モララーにも、ミセリに負けるとも劣らない、自責の念が渦巻いていた。
ドクオを、このような形で無理矢理巻き込んだ事。
ミセリを救えたのに、昔と変わらずミセリを泣かせてしまった事。
結局、自分は何も出来ていないと気付いてしまった。
右手で拳を作り、ぎゅっと握る。
爪で、肉を抉ってしまいそうなほどに……。
ぎゅっと握る。
- 18 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:47:04.11 ID:4d+G5Ljx0
( ∀ )「……このままじゃあ駄目だ。そうだ、駄目だ」
(;゚∀゚)「……?」
おもむろに携帯電話を取り出し、どこかへと電話を掛ける。
その手には、薄く赤い血がべたりとついていた。
どこかおかしくなってしまったモララーを、ただただ見守る二人。
ドクオの動かない体に顔をうずめ泣きじゃくるミセリ。
( ・∀・)「……俺だ。モララーだ。これから前に言っていた男を一人お前に預ける。そうだ」
(;゚∀゚)「ちょちょちょちょっと待て!!!おい!!!」
携帯電話を奪い取ろうとするジョルジュの胸を空いている手でそのまま突き飛ばし、
モララーは話を続ける。壁に体を叩きつけられたジョルジュ。
ジョルジュの額には、血筋が浮かび上がり、憤りを感じているのが見られた。
- 19 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:49:49.41 ID:4d+G5Ljx0
( ・∀・)「じゃあすぐにそっちへ行く。準備をしていてくれ」
ジョルジュが食って掛かろうとする。
しかし、それをいつものように止めるツン。
そして、ミセリを諭す。
自分には無い、小慣れた大人の余裕という物を見せ付けられたような気を、ジョルジュは感じていた。
電話を続けるモララー。
もう、あのひょうきんさが残っているモララーはそこにはいない。
切羽詰り、余裕の欠片も無い男が、そこにはいた。
なぜ、そこまで焦るのか――?
( ・∀・)「……この前、ちらっと話をしたのを覚えてるよな?」
無言で頷くツン。
ジョルジュは俯いたまま、何もアクションを起こさなかった。
( ・∀・)「ミセリの体の"劣化"が始まった場合の保険、ってよ」
ドクオの体を担ぐ。
ぐったりとしている体は、やはり生気は感じられない。
そのまま出口の方を向き、ジョルジュ達の目を避けて言葉を進める。
- 20 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:51:09.51 ID:4d+G5Ljx0
( ゚∀゚)「……大丈夫なんだな」
ξ゚听)ξ「私は何も言わないわ。
私には、この状況をどうこうできるコネも、力も無いもの」
ミセ*ぅー;)リ「んっ……ひっく」
( ・∀・)「……ありがとうよ。この保険を、ドクオにやってみようと思う」
そして、モララーは小さな言葉でドクオに伝える。
( ・∀・)「……すまない。体、借りるぞ」
もちろんドクオからの返事は無い。
ただ、ただそう言いたかっただけだ。期待など少しもしていなかった。
そして、モララーは、ドクオを担いだまま階段を上がり、建物から出ようとした。
出口に差し掛かった寸前。また後ろから声が聞こえる。
デジャヴかと思いつつも、モララーが振り返ると、そこにはミセリがいた。
考えを決めてから、ツンの持ってきた服を急いで着て、走ってきたんだろう。
息を切らしながら、目の端に涙を溜めていた。
- 21 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:52:30.00 ID:4d+G5Ljx0
ミセ;*ぅー;)リ「はぁっ……はぁっ……!!お、おにいちゃん!!ミセリも行く!!」
(;・∀・)「……はぁ?」
突飛な事を言い出すものだから、モララーも当然困惑する。
立て続けに、ミセリは声を張り上げ続けた。
ミセ;*ぅー゚)リ「私が……私がっ。ドクオさんをこうしちゃったんだから!!
このままじゃ……。助けられっぱなしじゃ駄目なの!!!」
( ・∀・)「……」
血は繋がっていない。
赤の他人だ。
でも、なぜこうも考えることが一緒なんだろう。
ミセ;*ぅー゚)リ「目が覚める前に、ドクオさんが言ったの……。
『モララーさんに、よろしく。仲良くね』って……」
( ・∀・)「……ミセリ…」
- 22 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:53:30.91 ID:4d+G5Ljx0
家族として、一緒くたに育てられてきたから?
俺達が『ポプラ』に、預けられたから?
違うだろう。
それは、違うだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「だから!!!連れてって!!!!」
やっぱり人は、何かで繋がってるもんなのかね。
まあ、らしくねぇか……。
( ・∀・)「…後ろに乗りな」
ミセ*゚ー゚)リ「お兄ちゃん!!!」
ドクオを助手席に乗せ、シートベルトをきっちりと閉める。
そして、ミセリが後部座席に着いたことを確認すると、エンジンをふかした。
- 23 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:55:05.38 ID:4d+G5Ljx0
車から覗く、流れるようなその景色を目の端に捉えながら、ミセリは質問をする。
なぜ、助けたのかと。
そして、モララーは答える。
助けたかったから、と。
簡単な問答と共に、車は目的地へとあっという間に着いた。
ニチャン環状線から少し離れた、キセイ市のホウコク町。
ウツダ町と、このホウコク町を直線で結ぶと、ちょうど中心にゾウリ総合ビルがある。
そのホウコク町にある、イトウ内科が、モララーの言う"保険"の場所。
( ・∀・)「じゃあ、行くぞ」
ミセ*゚ー゚)リ「うん」
そう言って、モララーとミセリ、そして担がれたドクオは内科の入り口を開き、中へと入っていく。
カランコロンと、喫茶店のベルのような音を立てていたのが、ミセリに印象付けた。
表に掲げてあった『本日都合により臨時で休業させていただきます』と書かれた掛け札の通り、
中はがらんどうとしていて、窓から指す太陽の光。
そして、その光を少しだけ遮る観葉植物が、薄明るい空間を作っていた。
スリッパに履き替えると、待合室のソファーにドクオを掛けて、モララーは声を上げる。
- 24 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:56:25.85 ID:4d+G5Ljx0
( ・∀・)「……来たぜぇ」
すると、奥の診療室から、女が現れた。
黒の長髪。
スタイルが良く、いい意味で女であった。
フレームの無い眼鏡を掛け、白衣を着たその女が、徐々にこちらへと近づいてくる。
少しの怪しさ、少しの妖しさ。
その両方の"あやしさ"を持ち合わせた女。
( ・∀・)「ミセリ。この人が、ドクオが助かるかも知れない、
時間稼ぎ……。いや、最後の切り札を持ってる、ペニサス、それと助手のノルノだ」
- 25 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 00:56:49.06 ID:4d+G5Ljx0
ノル゚-゚ノ「よろしくお願いします」
('、`*川「待ってたわよ。モララーちゃん、ミセリちゃん?」
――――
―――
――
何も無い世界。
それは、誰もいない世界。
俺が望んだ結果。
( A )『…………』
('A`)にはノルマがあるようです 第6話 『心から心へ』 完
人物簡易テンプレ
- 27 :◆Cy/9gwA.RE:2007/10/16(火) 01:00:29.68 ID:4d+G5Ljx0
- <人物簡易テンプレ>
('A`) ドクオ。このお話の主人公。24歳。
気弱。仕事が出来ない。低学歴。女もいない。
そんな毒男の象徴のような奴。体内にtanasinnを持つとされる。詳細は不明。
( ・∀・) モララー。ドクオの中にいるtanasinnをなぜか知る男。24歳。
『俺達』と、仲間を呼んでいる。変な所だけ律儀な男。
ξ゚听)ξ ツン。詳細は不明。
( ゚∀゚) ジョルジュ。詳細は不明。
ミセ*゚ー゚)リ ミセリ。緊縛されてカプセルに入れられている少女。
詳細は不明。
( ゚∋゚) クックル。方言を使う、屈強な男。ラウンジ西警察の刑事らしい。
( ФωФ) ロマネスク。おそらくクックルの後輩。
('、`*川 ペニサス。イトウ内科の医者。
ノル゚-゚ノ ノルノ。ペニサスの助手。今作ではアンドロイドでは無い。
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