6 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 18:45:37.26 ID:B/AeFLcS0


『さて、と……』

少し騒々しい日々が続いていた。
まあ、悪いものでは無かったけど。
得るものは沢山あったし、私の中の興味も、何かに向いた気がした。

事後処理、という訳ではない。
殴り書きされた大き目のメモ紙にある文章を、
一つに纏め簡潔化、要点を抽出し、新たな発見の足がかりにする。

それでも、そこに書かれている感情的な文章を、
距離を置いた違う視点からの文に書き換えるのは少しばかり時間がかかるようだ。

('、`*川「簡単にするって難しい、全く。馬鹿に生まれればよかったわ」
ノル゚-゚ノ「難しい事を簡単に書くほうが、頭を使うと言いますよ?」


『それもそうね』


そう言うと、少し微笑みながら、ペニサスはパソコンのモニターに向かう。
その隣でノルノは、カルテだろうか?ファイルを開き、一枚一枚確認するように目を通していた。
"あの一件"の後、ペニサスはモララーから、ある日記を受け取る。
だが、そこに書かれている事は、やはりにわかに信じがたいものであった。

7 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 18:47:10.50 ID:B/AeFLcS0

('、`*川「ねぇ、ノルノ"ちゃん"はこれ、どう思う?」
ノル゚-゚ノ「そうですね…一定の法則性があるとしか……」
('、`*川「よねぇ。まあ、確定にはもう少し時間がかかるわ」

カチリ。
ウィンドウを閉じると、少し背もたれに体を預ける。
部屋には、心地のいい消毒液の香り。

興味深い事など、最近は少なかった。なので、こうやって研究、分析にも熱が入る。
ただ、深みに入ろうとは全く思わなかった。

それは、人間が、動物として持つ一つの勘のようなものであり、
暗闇に安易に足を入れようとはしたがらないようなもの。


何があるかわからない。
何が起こるかわからない。

9 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 18:48:12.88 ID:B/AeFLcS0



tanasinn。
まだわからない事が多すぎる。


('、`*川「でも……」



――それでも、知りたい事の方が、多いのよね。







('A`)にはノルマがあるようです 第9話『Regress or Progress』

10 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 18:50:06.07 ID:B/AeFLcS0

――"夕焼け"だ。

なんて、綺麗なんだろう。
自分の中じゃあ、こんな陳腐な表現しかできないのが、悔やまれる。
今までの汚れを、全部落としてくれそうな、その橙色は、抽象化された救いに見えた。

そのままの自分が見えなくなった今の時代で"夕日"が作る影が、
本当の自分を映し出してくれる気がした。

( ・∀・)「とりあえず、俺はお前に謝らなきゃならねぇ。すまなかった」

改まって、頭を、ドクオに向けて下げる。
初めて会ったあの日からは、考えられない1シーンであった。
ドクオはモララーに、頭を上げてください、そう言ったが、モララーの頭は上がる気配が無かった。

"夕焼け"が、モララーが着ている黒のスーツに色味を与える。
モララーが頭を下げた事によって、ドクオは困りきってしまう。
頭を下げた事があっても、頭を下げられた事なんて中々無かったからだ。

"謝られ慣れていない"と言うべきだろうか。

(;'A`)「も、モララーさん」

ドクオの声も程々に、モララーは理由を語りだす。
それは、最初に会ったあの必死さからも伺えたもの、家族を守るという当然の行為。
だが、その行為には、人の犠牲をも構わないという強固な態度が混じっていた。

11 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 18:51:28.17 ID:B/AeFLcS0

( ・∀・)「ただ、ミセリを助けたかったんだ。その為にだったら、何の犠牲があってもいい。
      そう思ってた。でも、これは間違いだったんだ。何回謝って済むもんじゃねえのはわかってる」

心の変化を、打ち明けるモララー。

それを見て、ドクオは、正直に言おうと思った。
モララーの変化を見せられたのだ。それならば、変わった自分を見せたいと思った。

('A`)「……はい。本当は、何発でも殴ってやりたいです」

口ではそう言った。

でも、殴ろうだとか、怒ろうだとか、そういうものではなくて。
今なら、胸を張って、人に意見を言えることを、自分で自分に証明したかった。
生まれてから、ろくに自分の思っている事も言えてなかった自分を、打破したかったのだ。

( ・∀・)「なら……」
('A`)「でも、違うんです」

( ・∀・)「……何がだ?」

だが、ドクオはそう徹しきれる人間では無い。
今までの、24年の月日で"凝り固まって"しまっていた。

14 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 18:53:00.48 ID:B/AeFLcS0

('A`)「……なんでしょうかね? わかりません」
( ・∀・)「……? ははっ、なんだよそれ」

そうであっても、少しばかりであるが、打破した自分に見えた世界は、先程とは違って見えた"斜陽"であった。
なんだろうか?名前の通り"斜に構えた陽"に見えたそれは、救いではなく、挑戦の灯火であった。
決して陳腐な表現などではない。

一皮向けた人間の、正しい物事の見方、考え方であった。

そして、その先に見たモララーに、どこか同じ影を見た。
美しく照らす光。

その光が大きいほど、映る影に、姿を垣間見たのだ。
だが、それはよほど深刻なものでも無く、ドクオの頬を少しだけ吊り上げさせた。
モララーにも、そう見えていたのだろうか。定かではない。

ただ、この二人の間にとって"ただの怪しい人"と"利用対象"という関係が消えた。

15 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 18:54:14.06 ID:B/AeFLcS0

( ・∀・)「よっしゃ!謝れてすっきりしたぜ!
      お前には伝えなきゃいけないことがまだまだ山ほど残ってんだよ。
      それに、車でミセリが待ってる。行こうか」

(;'A`)「い、行くってどこにですか?またtanasinnですか?」

( ・∀・)「いや、お前腹減ってるだろ?うまいもんでも喰いに行こうぜ」
('A`)「そ、そうですか。驕りなら行きます」

(;・∀・)「いつのまにかちゃっかりした奴になっちまったな。
      驕りだよ驕り!!ほら、決まったならちゃっちゃと行くぞ!」

(;'A`)「わ、わっ」

それは、夜に近づいた診療所の離れでの会話。

ドクオは、モララーに捕まれた肩に伝わる温かさに、遠き日のあの風景を思い出した。
石ころを蹴って帰った、あの秋の夕暮れ。
鼻に残る、焼き芋屋の出す少し焦げた香り。
背の大きな父親に、肩に手を添えられながら、一緒に歩いたあの通り。
あの日、見上げた父親の顔。

だが、その父親の顔は白く霞み、見えないものであった。
時間が経てば、その記憶は薄っすらとしてしまうものであろうが、その霞みは霞みでは無く。
tanasinnに消されたであろう、原因の霞みであった。

17 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 18:56:18.06 ID:B/AeFLcS0

悲しみが、少しドクオを俯かせる。

ミセ*゚ー゚)リ「お兄ちゃんとドクオさん、何の話をしてたの?」
( ・∀・)「ああ。男同士のなんとやらだよミセリ」

ミセ;*゚ー゚)リ「なんとやら?」
('A`)「……はははっ」

消えたものは、もう戻らない。
それは、全てにおいて共通している事物。

人は生きていく上で、失うものが多い。
ある人は、その失うものが多いからこそ、人生と言うのは楽しいものだと説いた。
悲しみを乗り越えた先に見えるその本質こそ、人生の楽しみだと言うのだ。
もちろん、学の無いドクオはそのような言葉を知らない。
知らないが、今のドクオは、その本質を見事に捉えていた。

それは、消えてしまったのだからしょうがない、といった自暴自棄的なものではなく。
消えてしまったのだ。なら代わりとなる何かを見つければいい、といった、希望的探究心の溢れたものであった。

( ・∀・)「さあ乗りな。行き先はオオカミ町だ」
('A`)「……はい」

それは、夜が始まった診療所側での会話。
ポツポツと広がっていく、家の明かりを目の端に収めながら、緩やかに動いていく景色をガラス越しに見る。

――――
―――
――

19 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 18:59:23.01 ID:B/AeFLcS0

水面に落つる水滴は、その身を水面に吸い取られるようにしてその姿を消す。
だが、水滴はそのままでは役割を終えはしない。
そのままでは、水滴は終われないのだ。

故に、波紋を起こす。波紋という、アクションを起こす。
それこそが『水面に落とされた水滴』が持つノルマ。

クリアーすべき、課題なのである。
このノルマは、地球上、いや、宇宙の全てが関係して作られるべくして作られている。
どんな些細な事にも、小さな小さなノルマがあるのだ。

日々、全ての事物はそのノルマをクリアーしながら、月日を消費していく。
そうなると、必然的にtanasinnにもノルマがある、という結論に達するのだ。

そして、私はtanasinnのノルマを見つけた。
それは、有限たる事を知らしめるかのような、典型的なノルマ。
だが、tanasinnのノルマは、その宿主に課せられる。

そしてそのノルマを達成しない限り、その者に有限の命を与えるという事。



期限は『約6,393,600秒』『約106,560分』『約1,776時間』『約74日』




『約2ヶ月と13日』

23 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:00:58.38 ID:B/AeFLcS0

――――


( ・∀・)「お前のtanasinnが発症してから、今日で12日。今月は30日まで、来月は31日ある。
      言いたい事、わかるな?お前に課せられたノルマの期限、それがあと58日しか無いって事だ」

また、あの時と同じような道なりを、タイヤが踏みしめるような音と共に流れていく。
ドクオは、あの世界から帰ってきて間もなく、その事実を知らされた。
なぜ、ドクオにtanasinnが宿ったのか?
その事実は今もわからない。いや、モララーは知っているのであろうが。

そして、モララーの口から告げられていく、事実。

(;'A`)「……なんで今頃それを」
( ・∀・)「最初にその事実を話して、あの時のお前は受け入れられると思うか?」

('A`)「……思いません。というか、今もよくわからないんです」
( ・∀・)「だから、今言おうと思ってな。それと、ジョルジュが今持ってる、日記を見ればいい。
      ある人物の、tanasinnに対する観察日記みたいなもんだ。
      俺達は、その情報を元にこうやって行動してる。だから、心配はするな。
      俺達が、次はお前を守る、いや、守らせてくれ」

狭い水路に、急に大量の水を流し込んだとしても、入る量は一定と決まっている。
それを知っているモララーは、ドクオに無理矢理知識、事実を詰め込もうとはしなかった。
ドクオには、できるだけ絶望感が漂わないように、丁寧に言葉をつむいだ。

24 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:03:06.51 ID:B/AeFLcS0

赤信号を受けて、車が止まる。
そろそろオオカミであろうか、車の交通量が増えてきた。


('A`)「……」

フロントガラスに、水滴がつく。雨だろうか?
パッと、ドクオが後部座席を見ると、ミセリは眠っていた。
その一連の動きを見て、モララーはふと言いたい事があるのを思い出した。

(#・∀・)「あっ!!!ちょ、ちょっと話があるんだよお前に!!忘れてた!!!」
(;'A`)「な、なんですかいきなり怒って……」

しかめっ面をしているモララーを、助手席から見るドクオ。
不思議そうにこちらを向いているが、目をあわせようとしないドクオを、運転席から見るモララー。

(;・∀・)「……っ」

片手でハンドルを切りながら、頭を掻く。
どうやって切り出せばいいものか……。そう悩んでいた。

25 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:04:42.16 ID:B/AeFLcS0

『ミセリに手ェだすんじゃねえ!!』

……違う。
別にドクオはミセリに手を出した訳でもねえし……。
あの時抱きついたのはtanasinn解放の為だしよぉ……。

『ミセリの事、どう思ってるんだ?』

これ言っちまうと俺がミセリの事を好きなのがバレちまう……。
いや、もうそんなことで恥ずかしがる歳でもねぇんだけどよ、後ろにミセリもいるんだよな。

何考えてんだ俺。
今はそんなところじゃねぇってのに……。

('A`)「モララーさん?」
(;・∀・)「……!!い、いやシートベルトをきっちり閉めろっていってんだ!!」


(;'A`)「……は、はぁ」



テンポが狂うってのは、やっぱこういう事だよな。


……俺らしくねぇや、困った。

27 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:05:48.05 ID:B/AeFLcS0

――――

その後、モララーは黙り込んだまま車は進む。
向かった先は、2チャン環状線の中心部にあたる、オオカミ町であった。
オオカミ町は、ビジネス街と、繁華街が東西で分けられている、云わばこの周辺の中心市街地である。
服飾等が盛んで、海外からのセレクトショップ、ブランド直営店が名を連ねる。
そしてその繁華街に、モララー達の知り合いが営んでいるという飲食店があった。

( ・∀・)「……ミセリ!起きろよもう着くぞ!!」
ミセ*ぅー゚)リ「え……。ぅ、うん」

やはり、夜は交通の量が多い。
車の中から外を見渡すと、明らかにその筋の人間や、制服を着た女子高生。
金髪で、胸を肌蹴させている女、それを見てヨダレでも垂らしそうな男。色々な人間がそこにはいた。
人が多いと、それだけ人間ドラマがあるとはよく言ったものであった。

何をしていようとも、その人間にはそれだけの人生というものがある。
tanasinnは、それを拠り所とし、食物とする。自らを満たす上での、条件である欲として扱う。


('A`)「久しぶりにオオカミに来ました」
( ・∀・)「ああ、そうなのか?まあ俺たちも片手で数えるくらいだ……よし、着いたぞ、ここだ」

28 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:08:47.59 ID:B/AeFLcS0

そう言って、車は駐車場に入っていく。
アスファルトに書かれた"特別優待"の文字。
おそらく知人専用なのであろう、他は車で一杯であったのに、そこだけぽっかりと開いていた。

スイスイと、スムーズに駐車すると、ドアのロックをといた。
下車すると、そこには大きく看板で書かれた店の名前があった。

『満腹軒』

ありがちな名前だった。
外装は、赤茶けた色をしたレンガが周りを構築しており、どこか古くも懐かしい気分にさせる。
まるで、港付近のレンガ街のようであった。お店自体は大きく、二階建て。
外にも、皿がかち合うような、カチャカチャといった音、従業員達の活気に溢れた声が漏れていた。
繁盛しているのであろう。

( ・∀・)「店長はちょっと変わった奴だけど、まあ気にするなよなっ」
('A`)「はぁ……」
ミセ*゚ー゚)リ「おもしろい人ですよ!いつも忙しそうですけど」

などと話しながら、駐車場から表へ回る三人を、ある声が引きとめた。

31 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:13:57.53 ID:B/AeFLcS0

( ゚∀゚)「おぉ!!!ドクオが立って歩いてやがる!!」
ξ゚听)ξ「……本当にどうにかしちゃったのね。すごいじゃない?」

"俺達"である、ジョルジュとツンであった。
ドクオが目を覚ましたという事をモララーから知らされて、駆けつけたのだ。
ジョルジュは眠たそうな顔をしていた、おそらくあれからずっと日記帳と睨めっこをしていたのであろう、すこし腫れぼったくなっていた。
だが、ドクオの興味を惹いたのは、残念ながらそのジョルジュの頑張りではなかった。

ツンの格好である。

('A`)「ツ、ツンさんその格好は……?」
ξ゚听)ξ「あ、あーっと、言ってなかったわね。私、ホステスしてるの。
       このオオカミの近くにあるクラブでね。これ食べたら行かなきゃならないのよ。
       だからこんな格好なの、ごめんね」

そう言われれば、金髪の巻き髪や、そのスタイル、身のこなしが"らし"かった。
妙に納得している顔をするドクオを、どこか不満そうな顔をして見つめるツン。

ξ゚听)ξ「あら。ホステスって言っても売春婦じゃないわよ?
       まあ、端から見れば水商売なんて全部一緒みたいなもんよね」

(;'A`)「い、いえそういう訳じゃなくてですね……」

32 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:16:51.22 ID:B/AeFLcS0

( ・∀・)「素直にべっぴんさんって言っておけっての!!」
(;゚∀゚)「べっぴんさんなんてここいらじゃ使わねぇよ」

ξ゚听)ξ「もう、照れなくてもいいのに。まあ、夜はここで仕事をしてるのよ。
       お昼の仕事は、また機会があれば言おうかしら?」

まだ、こういう事には慣れていないドクオは、やはり顔を赤くして俯いてしまった。
楽しいのだが、まだその空気に足一本な感じである。
その照れた顔をしているドクオを見て、ミセリは一人ニヤニヤしていた。

ミセ*゚ー゚)リ「ほら、早く入ろうよみんな!お腹減っちゃった」
( ・∀・)「おし、んじゃ二階に部屋とってくれてるみたいだし行くか」

ガラスでできた自動ドアを通り、店内に入ると、そこには活気溢れた空間が待っていた。

店員が絶え間なく運んでいるような印象を持たせる忙しさ、
老人が仲間と紹興酒を片手にちびちびと楽しんでいる、どこか落ち着いた雰囲気。
まるで、ここにいる人たち全てを受け入れる、我が家のような場所であった。

ドクオの目は大きく開き、何か、新しい世界への一歩を踏み入れたような気分にさせた。

('A`)「すごいですね!」
( ゚∀゚)「毎回混んでるんだよなぁここ」

すると、奥からいそいそと油汚れでベタベタのコック服を着た、中年小太り。
いかにも中華料理人、といったような風貌の男が一人こちらへとやってきた。
モララーが軽く手をあげて、形式的ではあるが"ニーハオ"と口に出す。すると男もそう返した。

34 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:19:44.86 ID:B/AeFLcS0

( `ハ´)「アーララ!!ミナ中々来てくれないからサミシカタヨ!!!」
( ・∀・)「ゴメンよシナのおっちゃん。ちょっと立て込んでてね」

まるで漫画か小説にでも出てきそうなその"中国日本語"であった。
こんな人もいたのか、とドクオはすこし可笑しく感じたのをこらえる。

ミセ*゚ー゚)リ「えっと、この人がシナーさん!このお店の料理長だよ」
('A`)「初めまして。ドクオです」

( `ハ´)「あり?モラさんお友達?」
( ・∀・)「そうだよ。今日から"俺達"さ」

シナーが、細めがちの目から、キッとドクオを睨んだ……気がした。

( `ハ´)「よろしくネ、ドクロウさん!!私シナー言うヨ!!」
(;'A`)「よよ、よろしくお願いします。あとドクオです」

( `ハ´)「ああゴメンねドクロさん!じゃ席案内スルヨ!!」
('A`)「……」



ミセ* ー )リ「……くっ」
( ゚∀゚)「ほら行くぞドクロ!!」

36 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:21:33.66 ID:B/AeFLcS0

乱暴に握手されると、そのまま二階へ案内すると行って、
大きくらせん状になっている階段を上っていった。

二階も、中国独特……と言えばいいだろうか、
赤や金といった派手な装飾を施された椅子やテーブル、柱などが目を惹いた。

二階席、人が沢山いる中で、一番奥の大きめなテーブルに通された。
席につくと、間もなくシナーと、アルバイトであろうか、食前茶を持ってきた。

( `ハ´)「これウチのお勧めパイチャヨ!!アッツイから気ィつけてネ!!
      注文キマタラ聞くからまたここらにいるバイト君達に声カケテちょだい!」

またいそいそと厨房へと戻っていくシナー。
体の中心に浸み込んでしまっているのであろう。
椅子の背もたれに大きく体の重心をかけ、モララーが、ふぅと一息深呼吸をついた。

円卓を五人で囲む。
このような事、1週間とちょっと前には考え付かなかったであろう。
並べられた白茶の湯気を見つめながら、ドクオはボーッとしていた。

38 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:22:53.24 ID:B/AeFLcS0

( ・∀・)「ほいドクオ、何食いてぇんだ?中華料理なんだから、沢山たのまねぇと」

そう言って、渡される菜譜(中国料理における、お品書き)。
本来ならば、冷たい前菜から始まり、温かい前菜、スープ類、主菜と続き、ご飯や麺類、点心。そしてデザートと続く。

今回は特にコースなどは無いので自由に頼むのであるが、
ドクオは中国料理のルールなど知らないので、探り探り注文を決めていった。

('A`)「そういえば、どうしてここの料理長なんかと知り合いなんですか?」
( ・∀・)「ああ、そういえば言ってなかったな……って、シナのおっちゃんちょっと!!」

( `ハ´)「何カ?料理はもうチョト待つよいよ!」
( ・∀・)「いやぁ、そうじゃなくてさ、ちょっと"本当のシナー"を紹介しようと思って」

本当?
そう、ドクオは口に出した。
すると、シナーはにっこりと笑う、口元の奥に、ちらりと金歯が見えた。

( ・∀・)「シナーのおっちゃんは、ここいらの"アッチの筋"のお偉いさんだよ」


(;'A`)「……え?アッチって、ドッチでしょうか……」

39 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:23:47.96 ID:B/AeFLcS0
( `ハ´)「ドクロウさん、コッチね」


そう言って、頬に人差し指で一本線を描く――。



(;'A`)「は、はは!!ちょっと用事を思い出しましたぁ!!!帰って深夜アニメ録画させてくださぁい!!!!」
ミセ;*゚ー゚)リ「だ、大丈夫ですよ!そんな漫画みたいな怖い人じゃないですから!!」
ξ゚听)ξ「そんな漫画みたいな人いるわけないじゃないの」


(;'A`)「え、いや……。ここに……」


『漫画みたいな口調の人が、今ここにいるじゃないですか!!』

そう言おうとした。
でも、なぜか僕だけがそう思っているような感じがして、口に出すのが恥ずかしくなって……。

喉仏まで上がってきていたその言葉は、
蕩けそうな鱶の鰭が入った小籠包と共に、すっぽりと体の中に消えてなくなっていった。




('A`)にはノルマがあるようです 第9話『Regress or Progress』 完



人物簡易テンプレ


42 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/11(日) 19:25:49.14 ID:B/AeFLcS0
<人物簡易テンプレ>


('A`) ドクオ。このお話の主人公。24歳。
    気弱。仕事が出来ない。低学歴。女もいない。
    そんな毒男の象徴のような奴。体内にtanasinnを持つとされる。詳細は不明。
    ペニサスの薬のおかげ?で、精神世界から帰ってくる。

( ・∀・) モララー。ドクオの中にいるtanasinnをなぜか知る男。24歳。
      『俺達』と、仲間を呼んでいる。変な所だけ律儀な男。
      ペニサス達と、裏で交渉を進めていた。ミセリがすき。

ξ゚听)ξ ツン。オオカミの高級クラブのホステス。
       仕事はまだ他にもあるらしい。

( ゚∀゚) ジョルジュ。詳細は不明。

ミセ*゚ー゚)リ ミセリ。緊縛されてカプセルに入れられていた。
       ドクオが身を挺して、tanasinnから救った少女。

( ゚∋゚) クックル。方言を使う、屈強な男。ラウンジ西警察の刑事らしい。

( ФωФ) ロマネスク。おそらくクックルの後輩。

('、`*川 ペニサス。イトウ内科の医者。地下にグレープフルーツの大樹を育てている。

ノル゚-゚ノ ノルノ。ペニサスの助手。

( `ハ´) シナー。オオカミにある中華料理店の料理長兼店長。アッチの筋だとかコッチの筋だとか。


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