- 5 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:47:01.18 ID:IRMXCNfC0
『――先日から、散発的に起こっている白骨化事件ですが、
遂に警察が対策委員会を打ち上げるとの発表がありました。
ニチャン環状線を中心に発生している、この奇怪な事件に対して、
ニチャン県警は、ウツダ警察を主軸に置き、各方面からの捜査員を招集。
本格的に捜査に乗り出すとの事です。捜査員の人数は約350人。
状況に応じて捜査員を増員する事を検討している、との事です』
進まない、キーボードを打つ指。
頭の中では文章が出来ているのに、なぜか指が動かない。
良くあること。
それでも、どこかイライラしてしまう、この昼下がり。
耳に飛び込むラジオの、少しノイズが混じった音を受けて、
私は一文一文を選りすぐり、進めていく。
- 6 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:48:06.70 ID:IRMXCNfC0
ξ゚听)ξ「……ふぅ。慣れない営業メールに出版社からの催促メール、電話……。責めも受けも大変ね」
出来る事なら、化粧の一つもせずに、ベッドで大の字になって。
時計も何もかも、自分を縛るものは捨てて寝疲れるまで寝てみたいものね。
そう考えながら、ツンは、右手でマウスを操作、左手でカチカチと携帯電話でメールを打っていた。
本当はそのような事はしないのであるが。
だが、それもまた"俺達"の計画の一つになっていた。
モララー達が、ドクオの生存期間である2ヶ月少しの間にしなければいけない事。
そして、ドクオがその2ヶ月少しの間にしなければいけない事。
その二つを考慮して、外堀を埋めるようにしていく。
全ては"全てを円滑に終える為"にある。
ξ゚听)ξ「"今日の22時くらいに、また上司とお伺いするかもしれません。
その時はよろしくお願いします"ねぇ……。これは、モララーに報告かしら?」
- 8 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:49:17.74 ID:IRMXCNfC0
- この前来た猫顔の男。
聞けば、ウツダ警察の刑事課の人間だった。
真面目そうで"こういう"場所にも慣れて無さそうだったから、
メールアドレス、電話番号を聞き出すのに少し苦労した――。
ξ゚听)ξ『あら。またいらしてくれるのでしたら、お電話一つ頂ければお待ちしてますのに』
(;ФωФ)『え、えっと……』
( ゚&゚)『はっはっは。貰っておきなさいロマネスク君!
こういう遊びも、キャリアの人間なら、一つや二つ、覚えておくものさ』
ただ、その場で客の立場を詮索するような真似はしない。
この男、ロマネスクといったかしら?
そのロマネスクが例えキャリアであると聞いても、
真っ先にかぶりつくようでは、引き出せるものも引き出せなくなってしまうのだから。
- 9 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:50:44.98 ID:IRMXCNfC0
ξ゚听)ξ『では、こちらが私の名詞です。お暇があれば、いつでもお電話してくださいね』
(;ФωФ)『は、はい。ありがたく頂戴します!』
( ゚&゚)『ツン君はここいらの店で一番いい子だからなぁ、あまりハマりすぎるなよ?』
(;ФωФ)『アベおじさん!そんな事言わないで下さいよ!!』
ξ゚听)ξ『うふふ。では、外までお送りいたしますわ?』
( ゚&゚)『ああ、ありがとうツン君。またロマネスク君が来た時はよろしくしてやってくれ!』
どう考えても、超エリート。
このアベという男は、責任建設という、巨大企業のお偉い様。
週刊誌では、スーパーゼネコンを取り仕切る男、なんて謳い文句で紹介されている。
この店にもよく足を運び、金を落としていく良客。
その男が連れてくるのだから、相当なモノに違い無い、だから、少しずつ入り込む。
- 10 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:52:08.86 ID:IRMXCNfC0
本名、スギウラ・ロマネスク、24歳。
家系は曽祖父の代からの、生粋の警視庁の流れ。
父が、現警視監。祖父が元警視総監、あのスギウラ・エスケーツーの孫。
本名さえわかれば、ピンと来た。
祖父が、Wikipediaにも名前が載っているほどの人物なのだから。
ただ、それだけガードは固い。
ネームバリューに近づく人間全てに、警戒しているようにも見えた。
『では、お待ちしております。また何かあれば、ご連絡下さい。ツン』
メールにはそぐわない、丁寧な口調で話を閉める。
折りたたみの携帯電話の電源ボタンを二回、カチカチと押すと、フゥと一息深呼吸をつく。
ξ゚听)ξ「さて、モララーに連絡ね」
('A`)にはノルマがあるようです 第10話『狩るほう、狩られるほう』
- 12 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:53:26.84 ID:IRMXCNfC0
――――
久々に帰った我が家は、懐かしい香りがした。
畳の臭い、だけどそこには生活感は無くて、たしかにあったそれは、もう遠い過去のようだった。
('A`)「……ただいま」
誰もいないが、一応言う。
それは、今までもずっとしてきた事であった。
蛍光灯に光をつける。
もう10日ほどいなかった。後ろを振り返ると、
郵便受けにいくらか請求書や新聞が詰まっていた。
ゴソゴソと取り出すと、乱雑にテーブルの上に放り投げる。
そして、癖の様に留守番電話を確認すると、元いた会社から一件だけ、留守録が入っていた。
正直、聞く気は無かったが……。
『……もしもし、営業のタナカだけど。
フサギコさんが失踪したらしいんだ。置き書きも何も無しでさ。
で、もし居所とか知っていたら連絡くれると助かる。
いや、勝手な事言って厚かましいのはわかる。でも、知ってたらでいいんだ。連絡待ってるよ』
- 14 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:55:07.86 ID:IRMXCNfC0
その留守録を聞いて、まず頭に浮かんだ事。
それは"なんであの場所にフサギコがいたか"という事であった。
(;'A`)「そ、そういえばそうだ。なんであの時フサギコさんがあそこにいたんだ?」
あの時、地下駐輪場にいたフサギコは、血を流し、胸の部分が抉り取られたようであった。
tanasinnの所為かもしれないが、余りにも不自然。
そして、モララーがいたのも不自然。
今、改めて考え直すとおかしい事尽くめなのだ。
すると、ドクオの心の中に、疑心という一つの感情が生まれる。
うまく、丸め込まれているのでは無いだろうか?
利用するだけされて、最後は殺されてしまうのではないのであろうか?
モララーを含めた、俺達というメンバーは皆、tanasinnの回し者なのでは無いだろうか?
現に、自分はフサギコを殺した覚えも無いし、恨んではいたが、殺したくなるほどでも無かった。
- 15 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:56:27.28 ID:IRMXCNfC0
(;'A`)「い、いや……。そんな訳ない、そんな訳……。
そうだ。久しぶりにチャットルームへ行こう」
無理矢理、気分を晴らす為にPCチェアに腰掛け、久々にPCを起動する。
お気に入りに入れている『まりもチャット。』に、ログインすると、
いつものメンバーの何人かがログインしている事が確認できた。
時間は21時半。まだそれほど人がいない時間帯でも無い。
('A`)「……あれ?」
そういえば、と、ふと思いつき、いつものメンバーの名前を頭の中でおさらいする。
小さいコミュニティの中で、ぬくぬくと過ごしてきたメンバーの中に、
ふと違和感が生まれる名前があった。
『コナタン』
『ピチカァト』
『カッツ・O』
『モルボルボル』
『ミセリ』
……。
…………。
『ミセリ』
- 16 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:57:37.23 ID:IRMXCNfC0
(;'A`)「ミセリ…?え、まさかそんな訳無いよね」
いや、そうで無いのはわかっていた。
ミセリは、モララーさん達の孤児院時代に"発症"していたはずなんだから。
(;'A`)「名前だけ被るなら良くある事、か」
何か、自分の中に、漠然としない不思議が渦巻いている事を、
少し感づきながら、プライベートチャットルームへと入室した。
<<まりもちゃっと。プライベート四−三号室>>
――――
<ドックン さんは入室できませんでした。>
――――
(;'A`)「え?」
もう一度、入室をクリックする。
――――
<ドックン さんは入室できませんでした。>
- 19 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:58:31.34 ID:IRMXCNfC0
――――
やはり入室できない。
なぜだろう?そう、頭を傾げていると、モニター内の表示物が変わる。
パソコンが、独りでに、カリカリと、CPUの動作音を立てると……。
141592653589793238462643383279502884197169399375105820974944592307816406286208998628034825342
1170679
8214808651328230664709384460955058223172535940812848111745028410270193852110555964462
294895493038196
44288109756659334461284756482337867831652712019091456485669234603486104543266
48213393607260249141273
724587006606315588174881520920962829254091715364367892590360011330530
5488204665213841469519415116094
3305727036575959195309218611738193261179310511854807446237996
274956735188575272489122793818301194912
98336733624406566430860213949463952247371907021798609
43702770539217176293176752384674818467669405132
000568127145263560827785771342757789609173637
1787214684409012249534301465495853710507922796892589235
4201995611212902196086403441815981362
9774771 t 3099605 a 1870721 n
1349999 a9983729 s 7804995 i 1059731 n 7328160 n 9631859 502445945534
6908302642522308253344685035261931188171010003137838752886587533208381420617177669147303
5982
534904287554687311595628638823537875937519577818577805321712268066130019278766111959092164201
989
38095257201065485863278865936153381827968230301952035301852968995773622599413891249721775
28347913151 557485724245415069 59508 29533 11686 17278 55889 07509 83817
546374649393192550604
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003558764024749647326391419927260426992279
67823547816360093417216412199245863150302861829745
55706749838505494588586926995690927210797509302955
32116534498720275596023648066549911988183
4797753566369807426542527625518184175746728909777727938000
8164706001614524919217321721477235
014144197356854816136115735255213347574184946843852332390739414333
45477624168625189835694855
62099219222184272550254256887671790494601653466804988627232791786085784383
827967976681454100
- 20 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 17:59:48.18 ID:IRMXCNfC0
ほんの一瞬。
ドクオが、気付くか気付かないほど。
数字列を表示した後、インターネットブラウザを立ち上げる。
すると、ブラウザには、大型掲示板。
ドクオもよく暇つぶしに見ていた大型掲示板である。
カチ。
カチ。
クリック音を立てる。
すると、ある物を映し出した。
それは、スレにある文字化け文の羅列?であろうか……。
ドクオは、突然の変化に驚き、椅子から転げ落ちそうになる。
- 21 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:00:26.95 ID:IRMXCNfC0
- (;'A`)「ななな、何だよこれ!?ウイルス?D-Dos攻撃!?クラック?ハッキング!?」
――――――
これだケは言っておこうと思って俺はこのスレを立てた。
こノオカルト板ならtanasinn..........、もしかしたらこの事を知っている奴がいるかもしれなイ。
今から書く事を、頼む。
信じてクれ。
こ∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴ : : : . .
∴∵(・)∵000∵∴∵∴∵∴∵∴∵(・)∵∴∵∴∵∴∵∵∴∵∴ . .
tp:/::::::⌒(__∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵:
: : ‥
Aそのサ∴∵∴∵∴∵∴∵∴だ∵∴‥ ‥∵∴ : : .
∴∵∴∵∴二つのtanasinn : ○ 三
B:::::::∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵‥ 三 \___ ∴(・)∴∵∴ : :
. tanasinn..........tanasinn..........tanasinn..........tanasinn..........
の ∵/∴∵∴∵(・)∴∵∴∵∴ : .  ̄=== ‥∴∵∴ : : ‥
それは、今から起こる過去に抹消された∵∴ : ‥の事なんだ。
tanasinn..........
――――――
ある部分。
"二つのtanasinn""過去に抹消された"という部分だけ。
その部分だけ、紫色に輝いていた。
それは、元は見えないものが、見えているようになった、かのように。
ドクオが驚き、目を見開いている間に、インターネットブラウザは強制終了してしまう。
- 22 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:01:54.89 ID:IRMXCNfC0
- 不安になり、ウイルスチェックを行っている最中に、メールの着信音が鳴った。
パソコンや、携帯から立て続け起こる何かに、
忙しさを覚えたが、ただ事では無い、そう思って急いで携帯電話を開く。
――――
送信者:
a`JFEI)(#'$><>*###"J"+L.#('%R#KJGS+L.jjpp
宛先:
ddd@utsuda.nn.jjpp
件名:
おいカkっこKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKK
日時:
XXXX年XX月XX日
21:52:42
- 23 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:03:20.40 ID:IRMXCNfC0
- 本文:
もうヒとり。
わたしハもうひとり。
殺すよ。
殺す。
どッチかgadottikawo殺す。
じゃないト、終わらない。
覚悟しろ。
ずっとお前を見ている。
いると思えば、そこにいる。
<本文終了>
- 25 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:04:17.69 ID:IRMXCNfC0
- ――――
(;'A`)「な、なんなんだ……。なんなんだよ……」
……ザワッ。
全身に鳥肌が立つ。
興奮や、感動では無い。
恐怖による、鳥肌であった。
(;'A`)「はっ……!!はっ……!!」
後ろを振り向く、振り向くが、誰もいない、
だが、誰かいそうなのだ、すごく、いそうなのだ、
だが、そこにはだれもいない、いそうで、いない。
生活感の溢れた、一定の空間が歪みだした。
体の中の、何かがうずき始める。
消したはずなのに、消えたはずなのに。
その"中身"が、溢れそうになる。
感情が、内側から救われるような、煽り立てられるような感覚が。
『いると思えば、そこにいる』
その言葉だけが、頭に渦巻く。
少し、強く足に何かの力が入り、ドクオはその場で片膝をついた。
自分の中に、tanasinnはいた。
まだ、いたのだ。
- 26 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:05:07.58 ID:IRMXCNfC0
いると思った。
少しだけ、少しだけ。
なら、そこにいたのだ。
(; A )「んッ……ぐぁ」
当人を囲むように、紫色の塵が、摩るように、優しく展開されていく。
"いつものように"脊髄から染み出てくるtanasinn。
忘れた痛みは、すぐ、感じた事のある痛みへと、その痛みのステージを一つあげる。
優しい痛み。
搾り取られた体を見下ろすように、その塵は球体を象っていた。
ずっと前にも感じた、あの精神世界で見たような形。
それが、蛍光灯に群がる蛾の大群のように、そこにはいたのだ。
首を右に曲げ、強気な態度で、ドクオはギロリと睨んだ。
今までの自分とは違うのだ。
だが、ドクオが変われば、tanasinnも変わる。
tanasinnは、その変化を、ドクオへと知らしめた。
- 28 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:06:03.89 ID:IRMXCNfC0
_,. -‐''"∴∵``' ‐ .、._
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`:‐.、. _∴∵∴∵.-‐''"
『おまエがこのヨのソウぞうシュならなぜコこまでひどいシうちをする』
『おまエがこのヨのソウぞうシュならなぜわたシたちにヨろこびをアタえない』
低く、太い声。
腹の底に響くような、そんな声。
ドクオへ語りかける、その胸の内を、tanasinnは。
- 30 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:07:27.36 ID:IRMXCNfC0
(;'A`)「……仕打ち?喜び?」
――――――
――――
――
狂いつつある狭い世界で、ドクオはtanasinnを見つめていた。
つ
つ ある狂い 世界で
狭いt
a n
a、si nnをドク
オ見つめ
てい
たは
。
――――
- 31 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:08:20.79 ID:IRMXCNfC0
その宿主と、侵食主の対話が行われている頃。
男は、ある男を追い詰めていた。
それは、強者が弱者を一方的に追い詰める、狩りのようなもの。
空腹を満たすには、何かを腹の中へ放り込まないといけない。
『や……止めろ!!!お、俺は関係無いって何回も言っているだろう!!!
俺はあの取引に関与していない!!!組の末端の人間がやった事なんだよ!!!』
闇夜の歓楽街へ、吸い込まれていくその叫び声。
男は、それすらも快感に感じる。
追い詰める感覚。
相手の心臓を、少しずつ、少しずつ握りつぶすかのような、そんな感覚。
『もう、そんな事関係あらへん。ちょっとな、腹ァ、減ってんねや』
コンクリートの壁に、男の影が映った。
何か、霞んで見えるその影。
- 32 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:09:09.34 ID:IRMXCNfC0
尻餅をつき、腰が抜けている状態で、男は後ろへと下がり、下がり……。
少しでもその男と距離をとろうとした。
『……お前、俺が"どう"見えとる?』
『……はぁ……はぁっぐ……』
食べていないと、不安でしょうがない。力が無いと、不安でしょうがない。
男は、そう男に言う。追い詰められた男は、視点を、徐々に上へとやっていく。
吐き潰される、寸前の革靴。
自分の返り血であろう、赤い点々が付着したスラックス。
太い指。
薬指に刺さっている指輪。
大きな肩。
そこから上は、暗がりで見えなかった。
ただ、大きく笑い、白く輝く歯が見え隠れしていた。
『……見えへんのか』
男が最後に聞いた声。
それは、追い詰める男の、少し悲しさを帯びた声。
- 33 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:09:52.29 ID:IRMXCNfC0
( ∴∋∴)『ああ、もう俺は人間やないねんな』
男の胸ぐらを掴み、手繰り寄せる。
自分の意思と、何か違うもう一つの意思が葛藤する中で。
黒い霧が男の体を包み始める。
男の体も、泣き叫ぶその大きな声も、着ている服も、何もかも。
全てを包み込む、黒い霧。
残すのは、白い骨。
まるで、並べれば人体模型一つできてしまうのではないか、そう思わせるもの。
地面に、軽い音をあげながら、落ちていく。
まだ満足できないその顔で、路地に出る。
- 35 :◆Cy/9gwA.RE:2007/11/22(木) 18:11:27.76 ID:IRMXCNfC0
- ( ∴∋∴)『きョうは、あといっぴキくらイか』
見渡す――見渡す。
次の獲物を。
(;'A`)「……っ」
解く――解く。
謎めく、真相を。
二人の男は、引き合いはじめる。
どちらが狩る方で、どちらが狩られる方か。
見えない答えが、その答えになる。
ニチャン環状線で行われる、この物語は、加速を始めた。
('A`)にはノルマがあるようです 第10話『狩るほう、狩られるほう』 完
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